TESOL@ペンシルベニア大学

University of Pennsylvania 教育学大学院へのフルブライト奨学金留学

グループワークの乗り切り方

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大学の図書館の開館と同時にグループワークのミーティングに行ってきた。いつもながら、時間通りに到着するのは私だけだ。写真は今日のミーティング場所。ここでスカイプもできる。

今学期の授業はやけにグループワークが多い。授業内のグループワークではなく、課題そのものがグループワークであるため、毎週集まってディスカッションをしたり、ペーパーをまとめたり、プレゼンテーションの準備をしたりしなければならない。

グループワークは楽しいが疲れる

グループワークの良い点は、理解を深め、他の理論や事象や経験と結びつけて考え、課された論文や課題の内容以上のものを得られることだろう。しかもそれは長期記憶と結びつき、本当に自分のものになる。

反対に難しい点は、一人でやるよりも何倍も時間がかかることと、複数の人とスケジュールを合わせようとすると締切よりかなり早くこなしておかなければならないということだ。

例えば、木曜日の「第二言語習得」の授業で課された論文のプレゼンテーションとディスカッションリーディング(プレゼン後、テーマを発展させてクラス全体でディスカッションをする際のトピック設定と実際の運営)を3人グループで行うとしよう。すると、プレゼン当日より1週間前の木曜日の教授のオフィスアワーの間にアポイントメントを取っておき、教授と打ち合わせをする。そのためには遅くとも前日の水曜日にはグループミーティングをしておかなければならない。そのためにはさらにそれより前に論文を読み終え、ディスカッショントピックの叩き台を作っておかなければならない。つまり、プレゼン当日の前の週は、通常の週の分と翌週の分で2倍のリーディングをこなさなければならないということだ。

本来の週のリーディングは適当に…というわけにもいかない。毎週リーディングリスポンス(課題のペーパーを踏まえて発展的なリスポンスを書く。他の論文や理論や経験も織り混ぜる)が課されているからだ。しかも、木曜の授業だが火曜までにリスポンスをオンライン掲示板にアップロードし、水曜までに他のクラスメイトにコメントを付けなければならない。そして木曜当日の授業ではさらなる発展的な話し合いが行われる。

つまり、通常の週のルーチン課題と、翌週のプレゼンテーションのための別の論文の深い読み込みが全く同じ時期に重なってしまうのである。

また、火曜の「第二言語の評価法」の授業でも毎週グループ課題がある。例えばスピーキングの評価法についての論文を数本読み、その上で複数のサンプル音声を複数の評価の枠組みで評価する。5人グループで集まり、それぞれの評価を比較し、評価方法を分析評価してグループ全体として一つのペーパーにまとめ、月曜日までに提出する。ということはグループミーティングは土日になってしまう。5人の予定を合わせるのも大変だし、火曜に発表になる課題を終えるのに数日かかるため水曜や木曜にグループミーティングは不可能だ。

そんなわけで今学期は週末から火曜までが勝負で、土日こそ勉強とグループミーティング。メリハリなく1週間ずっとダラダラ勉強している感じで悲しい。

グループワークは楽しいのだが、仲良し同士でグループを組むわけではなくランダムに割り振られるので、初めましてどうぞよろしくの人とも毎週うまくやっていかなければならない。

火曜日のもう一つの授業「コンテクストの中の文化とコミュニケーション」という授業でも3人グループで英語の授業を行う。外部で普通に授業を行うため、グループメンバーの大学院生同士の問題だけではなく、生徒に対し教える責任もある。最終課題はムービーを作ったりワークショップデザインをしたりするのだが、グループプロジェクトとして行ってもよいし、個人プロジェクトにしてもよい。グループでやる方が良いものができるとわかってはいるが、私は一人の方が気楽だし、最終試験の頃にグループで日程や内容をすり合わせる苦労を想像するとちょっと無理なので、私は個人プロジェクトにするつもりだ。しかし前回の授業でクラスメイトに「一緒にやろう!」と声をかけられた。お互いのやりたいテーマを知っているわけでもないのに一緒にやろうと声をかけてくる人(しかも名前を知っている程度の仲)とはうまくやれる気がしないので断ったが、異なるバックグラウンドを持つ人と一緒にグループワークを行うのは結構大変だ。

 

グループワークを乗り切る2か条

あくまで個人的な見解だが、さまざまな国籍、文化背景、事情、性格の人たちとグループワークをする際に心がけるべき2つのことがあると思う。

寛容さというかあきらめというか図太さ

時間について

私の属するグループでは、時間通りに集合場所に到着するのはいつも私一人だ。最初はイラッとしていたが、他人の行動は変えられない。イラつくだけ損だ。今日も1時間しかグループスタディールーム(上の写真)を予約できなかったのに20分遅れて来るメンバーがいた。前回も、別のメンバーが20分遅れてきたあげくにパワーポイントのファイルの入ったメモリを自宅に置き忘れて取りに戻った。

文句を言っても状況は変わらないし、人間なので寝坊や忘れ物は誰しもあること。したがって重要な点は、その「無駄になった空白の時間」をどう使うかだ。

私はいつも、みんなが遅れて来ることを想定し、その隙間時間のうちにできることをやってしまう。上記のリーディングリスポンスへのコメント書きや、翌週の論文のダウンロードなど、いずれにせよやらなければならない細かなことはいくらでもある。グループワークで人が集まらなくてイライラするのは、自分の時間が無駄にされていると感じるからなのと、限られた時間を有効に使えないからだ。それならば、一人でできることや、いるメンバーだけでもできることを考え、建設的に時間を使えばいい。

というか、そう考えないと、あまりにも遅刻率が高すぎてやってられない。これはお国柄なのか、それとも学生さんだからなのか?

内容について

グループ内に一人は必ずいる、論文を読んでこない人。または、理解が十分でない人。これもあきらめが肝心だ。論文を読んでこなくても死ぬわけではないので読み込んでこない人もいる。体調が良くなかったのかもしれない。さまざまな事情があるだろう。読んでこなかった事実は変えられないし、「次からは読んできてくださいね」なんて小学校じゃあるまいし、とにかくこの切羽詰まった状況をどう打開するかだ。

遅れてくる人を待っている間に概要をレクチャーした時もあったし、みんなで共通認識を持っているかどうかをミーティング冒頭に確認し合ったこともある。人に説明することで自分の理解も深まるし、グループ全体で議論のベースを構築できる。むしろ読んでこない人がいることを逆手にとり、グループにとってプラスになることをやっていくしかない。成績はグループで一律につけられるのだから。

 

公平に課題を分配すること

1つ目の「寛容さ、あきらめ、図太さ」は心構えというか物の考え方だが、2つ目は実際のグループワークの運営の仕方だ。公平さ、これに尽きると思う。

3人グループのプレゼンテーションは、論文を3つの部分(これまでに判明している理論、実験手順、結果の解釈)に分け、それぞれ担当を設定している。プレゼン時間も公平に分配した。これはすべての話し合いが終了した後に担当箇所を決めた。そうしないと他人事になってしまい、エンゲージメントに差が出るからだ。

5人グループで毎週行っている評価法のグループ課題は、グループミーテイング時にGoogle Doc. でファイルを作成し共有し、話し合いながら5人で同時にファイルに書き込んでいく。話し合った内容をお互いにその場で補完しながら課題を作り上げる。すべて終了した後に、その課題を4つの部分に分け、4人に分配する。つまり5人全員の考えと話し合いの結果が少しずつ1人ずつに分配されるということだ。4人は各自自宅でその話し合いメモを文章化し、まとめた上で再度 Google Doc. にアップロードし共有する。締切時間を設定し、4人全員の文章が出揃ったところで残りの1人がフォーマットや体裁を整えて教授に提出する。これを毎週順番に役割を交代しながらやっている。

これは非常にうまくいっており、私以外の4人は全員2年生で知らない人ばかりなのだが、ルールが明確なことと公平な分配から、不満は全くない。ただ一つあるとしたら、あまりのマシンガントークに私が口を挟む余地があまりなく、彼らにとって私がお荷物で、私の貢献度が低いと思われているかもしれない。そこで私は、とにかく早く自分の担当箇所を終わらせて誰よりも早くアップロードすることと、論文をきちんと読み込んで5人の議論内容に理論的裏付けをするコメントをするように心がけている。

細かなことだが、ルールを明確にすることは複数人で1つのことをする際には本当に重要だと思う。担当者名、担当箇所、締切時間、行数や語数制限(課題全体で何枚以内、と制限されているため)など、面倒でもどこかファイルの余白に全員が共有で見られるようにしておくことで不要なトラブルは避けられる。

 

さて、明日はグループプレゼンテーションとディスカッションの運営がある。本来ならば先週の木曜日のはずだったのだが雪嵐で休講になったため、今週にずれ込んだ。プレゼンを行うこちらも聞く方のクラスメイトも、内容を忘れかけているのではないかと心配だ。しかも内容は「第2言語の、第1言語に及ぼす時間概念の構築への影響」ということで、認知言語学や心理学、脳科学と関連する実験論文。簡単に言えば、外国語を学ぶことでもたらされる思考パターンの変化だ。面白いが難しい。うまくいくといいな。

 

 

 

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移民教育タウンミーティングと、サンクチュアリーシティ(聖域都市)に対する大統領令について

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非常に政治的な話題であるため書くつもりはなかったのだが、トランプ大統領による、メキシコ国境への壁の建設とサンクチュアリーシティへの資金削減の大統領令への署名の報道があったため、アメリカの移民政策と移民教育の現状を伝えるため書くことにした。個人的な感想を挟まず事実だけ、フィラデルフィアで1月24日の夜に行われたタウンミーティングの内容を記録しておこうと思う。

タウンミーティングの概要

話し合われる内容と参加者

日本でも多くの自治体でタウンミーティングが行われている。下はその定義だ。

タウンミーティングとは、主に地域住民の生活に関わる事項を話題とする集会。一般には行政当局または政治家が実施する対話型集会を指す。英語圏では同名の地方自治制度(→タウンミーティング)との混同を避けるためにタウンホールミーテイング(英:town hall meeting)と呼ぶのが一般的である。

(出典:Wikipedia)

今回参加したミーティングの主催はフィラデルフィア市議会議員、フィラデルフィア市教育局などで、写真にもある通り、"Community Town Hall: Supporting Philly Immigrant Students"(コミュニティタウンホール:フィラデルフィアの移民の生徒の支援のために)と題され、フィラデルフィアコミュニティカレッジ(CCP)の講堂で行われた。一部記事によると200人以上集まったとあるが、講堂には立ち見の人も大勢いた。

www.philly.com

フィラデルフィアの公立学校の生徒の12%が英語学習者であるという統計がある。つまり生徒のうち8人に1人は英語を母語としない。バイリンガル教育のパイオニアとして長い歴史のあるフィラデルフィアであるが、政策転換や教員の確保などさまざまな要因が絡み、現在では勢いをなくしている。

thenotebook.org

 

タウンミーティングは、あらかじめ登録していた発言者が、自分の体験や思いを代わる代わる語っていくスタイルで進められた。 

 

体験談の内容

メキシコからの移民の母親

発言はすべてスペイン語で、1文ずつ通訳が介された。

3人の子どもが公立学校に通っている。学校での子どもの安全を強化してほしい。子どもが学校で差別的な扱いをされ、言葉によるいじめと身体的暴力を受けている。「この国の人間ではないのだから帰れ」と言われる。特に昼休みと放課後にターゲットにされる。授業時間以外にも目を配ってほしい。保護者として、ボランティアで昼休みや放課後の見回りや活動に参加したくとも、社会保障番号 (Social Security Number, SSN) を持たないためバックグラウンドチェックに引っかかり、参加することができない。SSNがなくてもボランティアできれば、もっと学校に関わることができるのに、残念だ。

 

2012年に移民として入国した男子学生

アメリカに来たばかりの頃、全く英語ができなかった。ESOL (English for Speakers of Other Languages, 英語を母語としない人のための英語) の授業に入ったが1種類のクラスしかなく、先生や周りが何を言っているのか理解できなかった。世界は、みんなのいる世界と自分しかいない世界の2つに分かれているようだった。複数のレベルのクラスや個別サポートがあればよかったと思う。英語の先生が不足している。バイリンガルのスタッフも不足している。入国したばかりの移民の生徒は、どこに何があってどう行動したらよいのか何もわからない。周囲の同級生がいろいろ教えてくれたが、それは周囲の同級生の責任でやることではないと思う。移民向けのリソースがもっとあれば良いと思う。

 

ベトナムからの移民の高校1年生の女子学生

発言はすべてベトナム語で、1文ずつ別の女子学生が通訳した。

個人的な体験を語るのではなく、私たちは 移民教育とESOL (English for Speakers of Other Languages, 英語を母語としない人のための英語)の授業に関し、オンライン調査を行ったので、この場でその調査結果を示し、移民の声を届けたい。調査で分かったことは、学校と保護者のコミュニケーションが困難だと多くの人が感じているということだ。バイリンガルのスタッフは週に数日しかいない。バイリンガルのメンターやカウンセラーの拡充が必要だ。移民の学生のほとんどがファーストジェネレーション(保護者が大卒でない家庭から子どもが大学に進学すること、第一世代)であるため、バイリンガルスタッフは必須だ。さらに、放課後のプログラムも不十分だという結果が出た。教育のための予算を拡充すべきだ。

(注:アメリカの高校では、大学進学の際に担任ではなく(そもそも担任という概念がない)ガイダンスカウンセラーと相談をする。この職は授業を行わない専門職で、生徒とカウンセリングを行いながら推薦状を書いたり成績を証明したり、出願の際に提出の求められる学校全体のプロフィール書類を作成したりする。私自身も日本の高校で、教え子がアメリカの大学に出願する際にガイダンスカウンセラーとしての書類を整えたことがあるが、アメリカはこんなに面倒なことをするのかと思うくらいに煩雑な書類の山で、何度も生徒と話し合いながら行った。アメリカでは学校の在籍生徒数に応じてカウンセラーの配置数を決定していることが多いようで、フィラデルフィアでは600人未満の学校にはカウンセラーを置かない年もあったようだ。下の記事に詳細あり。)

philadelphianeighborhoods.com

 

学校関係者

私の学校には多くの移民や難民の生徒がいる。多くが戦争を目撃し心に傷を負っている。戦争を経験し耳のない生徒もいる。そんな生徒が言葉や身体的暴力にあっている。10歳のシリア人の男子生徒が廊下で6人の女子生徒に囲まれて蹴られていたこともある。英語を話すかどうかは問題ではない。移民の生徒の中には英語が母語の者もいる。問題は話し手ではなく、聞き手にある。

 

メキシコからの移民の両親をもつ15歳女子学生

両親の出身はメキシコで、英語が話せない。学校とのコミュニケーションのためには私が通訳をしてきた。自分の両親だけではなく、他の家の両親のためにも通訳してきた。まるで自分が犯罪者であるような扱いを受けている。移民の子どもの私にも教育を受ける権利がある。

 

ハイチからの移民の男性

移民のための英語の授業を受けていた頃は、母語であるフランス語のわかるスタッフがおらずあらゆることに時間がかかった。私は公立学校を卒業し、去年MBAを取った。フィラデルフィアの人口の10分の1が移民である今、子ども達に投資しよう。彼らが必要としている支援をしよう。

 

難民であるムスリムの女性

私の母はジャーナリストで、真実を書いたために国にいられなくなりアメリカに来た。教育支援やメディケアには感謝している。多くの移民や難民は経済的問題を抱えている。一番の敵は不公平さである。大学の学費の高さに困っている。学費は無償にならないだろうか。

 

市当局関係者

私の両親も移民で、高校を卒業していない。州と市からの予算を BCA (Bilingual Counselor Assistant) と、保護者への英語の授業に充てるべきだ。全員にコミュニケーションの機会を増やしたい。

(注:フィラデルフィアではBilingual Counselor Assistant (BCA) という職種を設け、生徒や保護者とのコミュニケーション、通訳、事務などを行っている。)

Interpretation Services - The School District of Philadelphia

 

その他にも大勢の人が発言し、1時間半の予定だったタウンミーティングは、会場が閉鎖される直前まで2時間続いた。

 

移民政策と大統領令について

このタウンミーティングには同じ大学院に通うアメリカ人の友人と共に行ったのだが、ずっと疑問に思っていたことを彼女に聞いてみた。「移民ではなくアメリカ国民にお金を使え、と思わないのか」と。すると彼女は、Providing hope to everyone, とだけ答えた。

news.upenn.edu

彼女は上の記事の通り難民に英語を教えているのだが、公立学校のESOLプログラムに通うはずの生徒が彼女の教える民間機関に送り込まれてくることもあるそうだ。そして、リベリアなど、出身国の公用語が英語であるため英語力に何の問題のない生徒でも、人種を理由に送られてくるという。

 

そして今日(アメリカで1月25日)、トランプ大統領の出した大統領令を受け、サンクチュアリーシティ(聖域都市)であるフィラデルフィアの市長が、政府からの補助金を削減されてもサンクチュアリーシティであり続けると述べた。ちなみにサンクチュアリーシティとは、undocumented (正式書類のない)の移民、つまり不法滞在の外国人に対し、警察(自治体管轄)が介入しないという取り決めをした市のことである。

 

www.philly.com

 

ペンシルベニア大学も、昨年の11月末に学長がサンクチュアリーキャンパス宣言を出したばかりだ。大まかに要約すると、undocumented の移民であっても大学は保護しますよ、という内容だ。

 

賛否両論あるのは当然で、各ニュース記事でコメント欄がすごいことになっている。

壁の建設やサンクチュアリーシティへの締め付けといった移民政策だけではなく、ビザ発給数にも今後影響が出てくるかもしれない。私はJ1ビザという交流訪問者ビザでアメリカにいるのだが、トランプ大統領はJ1ビザの廃止を以前唱えていた。学生ビザへの影響はどうだろうか。新大統領が誕生してから揺れに揺れるアメリカだ。

 

 

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留学トラブル2 バスルームシェアとキッチンシェア

アメリカの大学寮は巨大だ。何棟もあるし、大学院生専用寮もある。

もちろんキャンパス外で部屋を借りることもできるし、ペンシルベニア大学の場合その方が割安だ。渡米前にオンラインで部屋を探し、大家さんとスカイプで面談し説明を受け、日本にいながら契約をする人も多い。facebookで同じ国籍の人同士でルームメイトやシェアメイトを募集していることもよくある。

大手サイトも大量にあり、オンラインで部屋の様子を確認し、家の周囲の通りの様子も見ることができるし、ルームメイトと面談することもできる。便利な世の中になったものだ。近所の犯罪発生状況もオンラインで調べることができる。下のサイトがその一例だ。

http://www.spotcrime.info

サブレットの部屋を探せば格安で住むことも可能だ。ただし、サブレットだと大元の家主や業者と契約を交わさず個人間でのやり取りで部屋を決定することが多いため、問題が複雑になりトラブルになっているケースも耳にする。

 

ペンシルベニア大学での寮生活はその点は楽だ。割高だが、契約は明瞭、光熱水費込み、WiFi付き、洗濯機乾燥機付きでしかも無料、修理依頼は一括大学へ。授業で私の通うメインの建物へは徒歩2分。

しかしもちろんトラブルもある。今日はバスルームとキッチンのシェアについて書く。

 

関連記事

upenntesolfulbright.hatenablog.com

 

ルームメイトとのバスルームシェア

掃除問題から異文化間交渉

私の暮らす寮には3種類の部屋があるのだが、私の部屋は独立しているワンルームでキッチン無し、バスルームだけを1人の隣人とシェアする最安の部屋で月900ドルである。

私は自分のテリトリーが乱雑でも気にならないのだが、公共の場が汚れていることがどうしてもストレスで、お掃除おばさんと化してせっせとバスルームを磨いている。

しかしバスルームをシェアしているルームメイトはシャワー使用後、洗面台のあたりまでフロアを水浸しにする。うっかり足を踏み入れてしまうと自分の部屋まで濡れてしまうほどだ。しかも硬水だからか、乾くと水の跡が残ってしまうから厄介だ。さらに、ルームメイトのロングヘアがあちこちに大量に散らばっている。

2人で共用なのでお互い様だし掃除くらい、と思い後始末は私がしていたが、毎度となるとモヤモヤもたまっていた。いつものように濡れたフロアを掃除しているとルームメイトが気づき、バスルームのもう一方のドア越しに話しかけてきた。

 

「いつもあなたが掃除していて悪いわ。

 私も掃除した方がいい?

 掃除用品買ってきて置いておこうか?

 

そうかなるほど。私、バスルーム掃除好きな変な日本人だと思われていたのか。

ルームメイトと話し合わず、そのくせ不満を抱えて一人でモヤモヤしている察してちゃんだったわけだ。言わなきゃわからないよね、そうだった、そのために口が付いてるんだ、と思った。あまりの考え方の違いに笑ってしまった。

その後話し合いをし、大人同士お互いに気持ち良く過ごせるように最大限努力する、というなんとも曖昧な約束をした。その結果、お互い競い合うように掃除をし、スーパークリーンバスルームを維持している。

 

ルームメイト彼氏問題

ルームメイトの、州外に住む彼氏が定期的に遊びに来る。引越しの際にその彼氏と話もしたし、微笑ましく思っているのだが、いざ一緒にバスルームをシェアするとなると地味に消耗することがある。

ある時は洗面台に置いている私の歯磨き粉が行方不明になった。ルームメイトに尋ねたところ、なぜかルームメイトの彼氏の鞄から出現した。使っても全然構わないが元の場所に戻してほしい。

2人でシェアしているバスルーム、3人でシェアするとなると朝は取り合いである。というか向こうの2人に取られっぱなしである。

ルームメイトの彼氏のトイレの使い方に絶句したこともあった。

シャワールームの使い方はルームメイト以上にひどく、どうやったらこんなになるのだろうと心底疑問に思うほど、バスルーム全体のフロアが水浸しになる。

バスルームにいながら向こうの部屋と大声で話をするので声が筒抜けで、翌日締切のペーパーを書いていた私はたまりかねてバスルームのドアを叩き、Heeeeey! Can you guys talk in your room!? Thanks! と怒鳴ったこともある。

 

寮のフロアでのキッチンシェア

私の部屋にはキッチンがないため、寮に住む希望者で共同キッチンを借りており、学期ごとに追加で100ドル支払っている。寮は22階建てで、上下3フロアに住む8人で共同使用だ。キッチンと言っても、キッチン付きの普通の空き部屋である。

ちなみに、キッチンとリビングルームとバスルームを1人のルームメイトとシェアするダブルルームは月額1人あたり1000ドルだ。専用のキッチン、リビングルーム、バスルーム付きの1人部屋だと月に1500ドルかかる。今回の共同キッチンは、この1500ドルの空き部屋を開放してもらっている。

使用前からキッチンがカオス

共同キッチン使用前に8人で顔合わせをし、清掃や消耗品や冷蔵庫の使い方などを話し合ったのだが、最初の数週間はさまざまあった。

 

部屋の鍵が開いていて、見たことのない人がソファでくつろいでテレビを見ている。

知らない人が大勢でパーティーしている。

奥の部屋のドアをきっちり閉めて何事か行っている。

トイレに落とし物がある。

誰のか分からない炊飯器がずっと保温中である。

いつのか分からない食品が冷蔵庫に放置されている。

3つのコンロのうち2つが壊れている。

 

顔合わせをし、みんなでキッチンに行ったその時から所属不明の食品群とトイレに落とし物があったため、寮の全体管理部署に連絡して処理を依頼した。

しかし管理部署は冷蔵庫内の食品は関知しないとのことだったので、有志で集まり、冷蔵庫内断捨離を行った。

後から聞いた話によると、昨年度にキッチンを使用していた人たちの鍵を回収せず、出回っていたらしい。

 

使用者もカオス

8人でキッチンをシェアしているとやはりいろいろある。

 

使用した調理器具をシンクに数日間放置する。

コンロを汚したまま放置し、煙を出す。

アルミホイルを電子レンジでチンして火花を出す。

謎の乾麺が部屋中に散らばっている。

冷凍庫に詰め込みすぎでドアが開いている。

生肉がラップもせずむき出しで冷凍庫に突っ込まれている。

冷蔵庫内には炊飯器の釜がむき出しで突っ込まれていて米がカピカピになっている。

名前を書いて入れておいた食品が冷蔵庫からなくなる。

 

寮生活あるあるだ。

私は自分の部屋にミニ冷蔵庫を置き、共有冷蔵庫に入れているものは白菜やキャベツなどの大きな野菜だけにして自衛している。

 

(追記)
これを書いた4日後に、共有冷蔵庫に入れておいた白菜が1玉まるまる消えた。日本で手に入れられるような立派な白菜ではなく、可愛らしい小玉白菜ではあるが、きちんと白菜で、重さによるが1玉3ドル以上する。アンチョビと白菜のパスタを作ろうとウキウキしながらキッチンに行って白菜が消えている悲しさは言葉では表せない。
ちなみに白菜は英語で Napa Cabbage という。ナッパである。

 

おまけ 昔経験したカナダでの男女共同バスルーム

大学時代に留学していたカナダのヨーク大学の寮は、フロアでバスルームとキッチンが共同だった。フロアの中央のバスルームにトイレが4〜5つ、シャワールームが3つ、バスタブが1つあり、同じフロアに住む20人ほどで共同使用だった。

男女一緒のフロアだったため、当然バスルームも男女一緒である。

海外にはよくあることだが、トイレのドアは日本と異なり膝下が見える。シャワールームのドアも同様で、上も下もオープンだった。

そんな状況での男女一緒のバスルームだったため、さまざまあった。

 

誰がトイレに入っているのか足元で判別できるので、いたずらで上からトイレットペーパーを投げ込む学生がいる。

トイレ後の臭い消しのためにマッチを擦るカナダ人が多く、個室でボヤ騒ぎを起こす。

シャワールームのドアの高さよりも背の高いカナダ人が多くいて、シャワーを浴びていると上から目が合う。そしてハーイと声をかけられる。

シャワーを浴びた後、男子学生はパンツ一丁かバスタオル一丁でそこら辺を歩き回る。

シャワーを浴びた後、女子学生の中にはバスタオル一枚でそこら辺を歩き回る者もいる。

コモンルームという、各フロアにある、ソファとテレビのある共同スペースにパンツ一枚やバスタオル一枚の姿の男女学生が多数集い、ナチュラルにテレビを観ている。

 

海外の寮で生活すると自分の常識からは考えられないことに遭遇する。他にも(ここには書けないような)さまざまなことがあり、私はカナダの大学寮は耐え切れず半年で出てハウスシェアをした。まあ、そこでもさまざまあったわけだが、寮よりは快適だった。犬猫と共同生活で癒されたし。

今はもう大人になり、トラブルがあっても生徒に話せるネタが増えたと喜んでいるくらいだが、博士課程に在籍する人や、人生に関わる研究生活を送る人や、お子さん連れで留学する人は、どうか住まい選びは慎重にしてほしいと思う。安全と清潔と心の平穏のためにはある程度の住まいレベルが必要で、それらはお金で買うことができる。

 

教訓2 快適な留学生活にはルームメイトとの条件の話し合いが必須。安全と清潔はお金で買える。

 

 

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