TESOL@ペンシルベニア大学

University of Pennsylvania 教育学大学院へのフルブライト奨学金留学

アメリカで英語を教える(上級クラス第1回)Small Talk

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PEDAL@GSE - PEDAL@GSE Classes

ペンシルベニア大学の教育大学院の主催するPEDAL@GSEとは、Practical English for Daily Living @ Graduate School of Educationの略で、ペン大に通う学生の家族またはスタッフの家族で、英語を母語としない人であれば誰でも無料で通える英語のレッスンだ。教える人は大学院のTESOL専攻の学生で、私のような留学生も教壇に立っている。

ペン大の大学院TESOL課程では、フィールドワークという教育実習のようなものが必修である。大学院生にしてみれば、教育実習の前に、大学院の授業で学んだことを生かしながら実際に英語を教える良い機会となるし、さらに留学生にとっては、大学キャンパス内で教えるのでOPTやCPTの手続きの必要もない。ビザの関係上、外部で働くことは無報酬であっても認められないのだ。実際私も、8月に渡米し、9月にはここで英語を教え始めたので、かなりスピーディーと言える。また、このレッスンに通う人にしてみれば無料で英語を定期的に教わるチャンスであり、教える方と教わる方の両者にとって都合の良い、よくできたシステムである。

ティーチングスタッフを希望する大学院生に対し、セレクションが9月初頭に行われた。内容は、英語の授業に関するディスカッションと、その場で割り振られたグループでの指導案と教材作成と、グループでの授業デモンストレーションで、3時間かけて行われた。その他、志望理由書や、セレクション終了後の自己評価書等も含め、総合的に決定されたのだろうと思う。競争率は2.5倍ほどであった。

PEDAL@GSEには、初級、中級、上級、ディスカッションの4つのクラスがある。私は他の3名のファシリテーターと共に、上級クラス担当として授業を行うことになった。

都立高校で英語を教えてかなり経つし、学生時代には幼稚園児や小学生に英語を教えていたこともあったが、大人に英語を教えたことはない。ましてやアメリカで、母語やバックグラウンドがさまざまな大人である。生徒はペン大のビジネススクールやロースクールやメディカルスクールに通うビジネスマンや弁護士や医師の家族であり、生徒自身も専門職に就いていたり、これからアメリカでプロとして働こうとしている人も多い。そんな人たちに上級クラスで英語など教えられるのか、胃の痛くなる思いで初回を迎えた。

今回はテーマを Small Talk とし、初回らしい導入回となった。2時間の授業構成は以下の通り。

1. Placement Conversations
2. Introduction to PEDAL@GSE
3. Small Talk Brainstorm (Introduction)
4. Small Talk Steps (Meaning-focused Input)
5. Question Tags (Language-focused Learning, Meaning-focused Output)
6. Role-play (Meaning-focused Output, Fluency Development)

 

1. Placement Conversations

生徒は自己申告で各レベルのクラスに参加するため、授業前に全生徒に対しファシリテーターが個別インタビューを行い、上級クラスで合っているかどうか判断とカウンセリングを行う。質問内容はあらかじめ決まっており、rubrics に従ってプレイスメントを行う。

2. Introduction to PEDAL@GSE

ファシリテーターと生徒の自己紹介を短時間で行う。PEDAL@GSEの簡単な説明と、今週のテーマを紹介する。

3. Small Talk Brainstorm (Introduction)

生徒は3人グループになる。 small talk の意味、状況、目的、ふさわしいトピックと避けるべきトピックについてブレインストームを行う。トピックに関しては、母語との違いも話し合わせる。終了後クラス全体で意見を共有する。

4. Small Talk Steps (Meaning-focused Input)

生徒は新たな3人グループになる。ファシリテーターは small talk のモデル対話をクラス全体の前でデモンストレーションする。生徒に、このモデル対話の印刷されているシートを配布し、small talk をどのように始め、続け、終わらせるとよいかについて話し合わせる。生徒はグループでブレインストームを行う。シートの裏面には、もう1つ新たな対話が印刷されている。対話はグループにより異なるものを配布し、5種類用意した。新たな対話についても、そこで用いられている対話のコツは何か話し合わせる。終了後グループごとに発表する。挙がったコツをすべて黒板に書き出し、フィードバックを与える。付加疑問文など質問の種類についても簡単に触れる。

5. Question Tags (Language-focused Learning, Meaning-focused Output)

small talk でよく使用される付加疑問文の作り方をパワーポイントを用い、生徒とのインタラクションを通じて説明する。付加疑問文の効果についても質問し、さまざまな効果や機能や目的を生徒から引き出す。生徒はペアになる。各ペアに tag question cards を20枚ずつ配布し、各生徒が10枚ずつ持つ。生徒はカードに書かれている文に繋げる tag を考え、その場で口頭で言う。相手はそれに対し答えとなる文を考えて口頭で言う。ペアでこれを順番に行う。クラス全体で、迷いのあったものについて挙げさせ、確認する。

6. Role-play (Meaning-focused Output, Fluency Development)

生徒は2列になり、向かい合わせの人とペアになる。各ペアに異なるシナリオを渡す。シナリオには、「朝の通勤時、マンションのエレベーターがなかなか来ないところに隣人と出会ったので話しかける」「友人の誕生日パーティーに行ってみたら知らない人ばかり、隣の人に話しかける」などの状況が書かれている。ペアでその状況に応じた small talk を2分間続ける。終了後、新たなペアを組みシナリオを替え、複数回繰り返す。

 

 

初回のためプレイスメントインタビューに時間がかかり、2時間丸々は使えなかったが、Nation の Four Strands のバランスと流れを考慮し、英語上級者の大人が実際に使う英語の表現を重視した授業構成とした。

生徒は自ら希望して来ており、モチベーションも高く英語力も高く、中には私より英語の上手な人もいて、一体何を教えたらいいのやら、と少し不安だ。生徒の出身地域はアジア、ヨーロッパ、南米、中東、とさまざまで、この多様性を生かした授業を行いたい。これから3か月のレッスンが生徒にとって少しでも意義のある時間になるように、アイデアを絞り出し、工夫と準備を精一杯行おうと思った。

 

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