TESOL@ペンシルベニア大学

University of Pennsylvania 教育学大学院へのフルブライト奨学金留学

アメリカで英語を教える(上級クラス第4回)Housing

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PEDAL@GSE - PEDAL@GSE Classes

今週のテーマはHousing。家のトラブルは毎日あるわけではないので知っている、使える語彙も意外と少ない。しかしアメリカで家を借りると築100年とかよくある話なので、いざ住んでみるとトラブルもよくある。大家さんや不動産会社の対応もまちまちだ。困った時に冷静に対処し、しかるべきところに連絡し、修理依頼をし金額や日程を交渉するのは結構な大仕事だ。さらに連絡方法が電話であれば、難易度は格段にアップする。

PEDAL@GSEは、"Practical English for Daily Living" の acronym で、日常生活に密着した英語の表現のレッスンを中心としている。今回は Housing に加え、苦情の言い方や依頼の表現を組み込んだ。

英語上級者にとっても、苦情は難しい。要求を通そうと明快な言い方をすると無礼だと思われてしまいがちだし、かといって丁寧に相手を思いやった表現をしようとすると自分の意図が伝わりにくい。上級クラスらしく、「直接的な表現だが丁寧で、きちんと要求を通す表現」を目指した。

今週の2時間の授業構成は以下の通り。

1. Housing Bingo (Introduction)
2. Household Problems Vocabulary and Collocation (Meaning-focused Input)
3. Describing Problems (Language-focused Learning)
4. Describing Problems Practice (Meaning-focused Output)
5. Making Complaints and Requests (Language-focused Learning, Meaning-focused Output)
6. Polite Requests Practice (Meaning-focused Output)
7. Role-play (Fluency Development)

 

1. Housing Bingo (Introduction)

生徒にビンゴシートを配布する。ビンゴには、今回のテーマの Housing に関する項目が書かれている。「ペット可の家に住んでいる」「大家さん(または管理会社)は協力的だ」「庭がある」など。生徒は立ち上がり、クラスメイトに質問しビンゴを完成させる。

2. Household Problems Vocabulary and Collocation (Meaning-focused Input)

生徒を3〜4人グループに分け、グループで家に関するトラブルと、誰に修理依頼をするかを思いつくだけ挙げさせ、その後クラス全体で共有する。Plumber, Carpenter, Locksmith, Exterminator, Electrician 等の語彙とその仕事内容を確認する。

3. Describing Problems (Language-focused Learning)

家に関するトラブルの経験を生徒に質問し、全体で共有する。その体験談を基に、パワーポイントを用いながらインタラクションを交えて説明する。language focus は SV ...ing / ...ed とした。My smoke detector has been beeping for 3 days や The sink is clogged など。

4. Describing Problems Practice (Meaning-focused Output)

生徒はペアになる。各ペアに異なるワークシートA, Bを1枚ずつ配布する。ワークシートには家のトラブルの絵と期間が書かれている。ペアのうちワークシートAを持つ生徒は相手にそれを見せずにトラブル内容を伝える。聞き手はその内容を書き取る。終了後ワークシートBを持つ生徒が同じことを行う。絵の内容は、「ドアが開かない」「電気が点かない」「天井から水漏れ」「ネズミが出た」など各ワークシートに5種類ずつ。

5. Making Complaints and Requests (Language-focused Learning, Meaning-focused Output)

ファシリテーターがモデル対話を示す。部屋の借主と大家という設定で、借主が礼儀正しいバージョンと失礼バージョンの2種類をデモンストレーションする。どちらの借主が苦情を受け付けてもらえそうか、そしてその理由を生徒に質問する。さらに、どうしたら要求や依頼を通せるか、あえて失礼な態度に出る時はどのような時か、そしてどのように伝えたら効果的かを話し合う。パワーポイントでトラブル例を示しペアで練習する。1 greeting and identifying, 2 polite apology, 3 reason for calling, 4 describing problems and duration, 5 polite request, 6 add urgency の6項目をテンプレートのようにして練習した。テンプレートは次の通り。
Hello, this is John from apartment A10. I'm sorry to bother you, but there seems to be a problem with my oven. It has been broken since last Tuesday. Would you mind sending someone to fix it as soon as possible?

6. Polite Requests Practice (Meaning-focused Output)

生徒はペアになる。各ペアに家に関するトラブルのシナリオを配布する。シナリオは4種類あり、各ペアが1つずつ受け取る。各ペアで話し合い、それぞれのトラブル解決へ向けてどのように誰に依頼するか、電話での依頼のセリフを作成する。終了後、異なるシナリオを持つペアと組み、それぞれのシナリオと依頼セリフを発表し合う。

7. Role-play (Fluency Development)

生徒は2列になって着席する。片方の列には借主、もう片方の列には大家の役を与える。借主役の生徒それぞれに異なるトラブルのシナリオを配布する。大家役の生徒それぞれに異なる性格の大家のシナリオ(協力的な大家、意地悪な大家、忙しくて借主に関わりたくない大家等)を配布する。向かい合わせでペアになり、借主役の生徒が苦情を申し立て、大家役の生徒が対応する。丁寧な表現で要求が通らなければ強い言い方に変える。2分セットで、シナリオを交換して複数回繰り返す。借主と大家の役割を交代し同様に複数回繰り返す。

 

私自身もオンボロ大学院寮に住み、あるはずの家具がないとか電気が点かないとか洗濯機が動かないとかキッチンのコンロが壊れたとか郵便物が届かないとかしょっちゅうだ。暮らし始めて1か月ちょっとだが、すでに何度も電話で修理依頼をしたし、オンラインでもメンテナンス依頼をした。そうは言っても20階建てで数百人の暮らす寮である。いつ直しに来てくれるのか、そもそも直るものなのかもわからない。それでも、修理に来てくれる可能性を高める表現を身につけるのにこしたことはない。修理してもらえるよう戦略的に考える必要がある。

日本で修理依頼をする時は戦略など考えたこともなかった。日本のサービスは優秀だなあと改めて思う。アメリカは個別交渉が基本だ。ちょっとしんどいこともあるが、面白がって攻略したい。

 

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