TESOL@ペンシルベニア大学

University of Pennsylvania 教育学大学院へのフルブライト奨学金留学

アメリカで英語を教える(上級クラス第7回)Shopping and Budget

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PEDAL@GSE - PEDAL@GSE Classes

買い物表現は定番であるが、上級クラスで学びのある授業にするためにはどうしたら良いか。試着のお願いや値引き交渉などには苦労しない生徒たちである。今回は、amazonの実際のリターンポリシーを用いて返品手順をシミュレートしたり、フィラデルフィアのsoda tax(砂糖を含む清涼飲料水に科される税金)のディスカッションを行ったり、誰かに贈り物をする際にフィラデルフィアのどこで何を買ったらよいか話し合うなど、authenticでrealisticな活動を主眼に置いた。英語上級者の大人への授業は、茶番にならないように現実的で実用的な活動をひねり出すのに一苦労だ。しかしそこが最も面白いところでもある。

 

ちなみに、フィラデルフィアがsoda taxの導入を決めてからまだ半年も経っていない。全米でもまだ拡大していないが、フィラデルフィアの事例は今後大きな影響を及ぼすと思われる。コカコーラ等の大企業の反発、医療費との連関、消費者の健康意識、州の税収など、肥満大国アメリカの複数の側面を反映している。

www.philly.com

 

今回の2時間の授業の流れは以下の通り。

1. Store Information (Introduction)

2. Amazon Return Policy (Meaning-focused Input)

3. Subjunctive (Language-focused Learning)

4. If-sentences (Language-focused Learning, Meaning-focused Output)

5. Two-side Discussion (Meaning-focused Output)

6. Giving Shopping Suggestions (Fluency Development)

 

1. Store Information (Introduction)

フィラデルフィアで買い物する店名を生徒に思いつくだけ挙げさせる。パワーポイントで定番店舗を写真で示し、それぞれをカテゴリー分けさせる。ディスカウントショップ、高級デパート、会員制店舗、トレーダージョーズのような自社ブランドストア等に分ける。

しかしTrader Joe'sをトレジョと日本で略すのはどうにかならないものか。歴女とかの仲間のトレ女かと思うし美しくない。アメリカではTJ'sやTJと呼ぶことが多いようだ。

 

2. Amazon Return Policy (Meaning-focused Input)

amazonのリターンポリシーを生徒に配布する。そこではIfを用いた表現が豊富に使われている。生徒をペアにし、各ペアにシナリオを配布し、返品できるかどうかをペアで話し合わせる。シナリオ内容は、「A社(実際は具体名を表記)のベビー用品を誤って買ってしまったので返品したい」「B社(実際は具体名を表記)のジャムを、35日前に誤って2個買ってしまったので1個返品したい」「タブレットを購入したが開封したところ作動しない」「炊飯器を11月初めに購入したが1月に返品できるか」等である。リターンポリシーは複雑で、商品やメーカーによって対応が異なるし、購入日やクリスマスシーズンにギフトとして購入したかどうかによっても異なる。生徒はシナリオとリターンポリシーを分析し判断する。別のペアと組み、自分たちのシナリオを説明し、それが返品可能かどうかとその根拠を相手ペアに説明する。

 

3. Subjunctive (Language-focused Learning)

2人のファシリテーターがモデル対話を生徒の前で行う。対話はamazonへの返品と、今回のlanguage focusである仮定法を含むものである。

A: Hi! Did you get the coffee maker you had been talking about?(この前話していたコーヒーメーカー来た?)

B: Yeah, I bought it from Amazon, but the problem is... it doesn't work properly. It stops working in the middle of brewing.(うん、アマゾンで買ったんだけど、ちゃんと動かないんだ。途中で止まっちゃうんだよね。)

A: Oh, that's too bad. If I were you, I would call Amazon.(私ならアマゾンに電話するけど。)

B: I threw it away.(捨てちゃった。)

A: Why did you do that!? If you hadn't thrown it away, you could have returned it to Amazon for free.(なんで捨てるの!もし捨てなかったなら、無料で返品できたのに!)

 

モデル対話を基に、パワーポイントを用いながら、仮定法の表現はどんな場合に使うのか、どのような形をとるのかを生徒に質問し、インタラクションを交えながら説明する。その後、生徒にワークシートを配布する。生徒はワークシートにある買い物やお金に関するシナリオを4つ読み、それぞれに対応する仮定法の文を作り、記入する。生徒はグループで解答を確認する。誤りの多かったシナリオについては取り上げて全体で確認する。

シナリオの例:

John doesn't pay his staff properly, and perhaps that's why they don't work well.

I didn't know that she was short of money, so I didn't lend her some.

 

4. If-sentences (Language-focused Learning, Meaning-focused Output)

生徒はペアになる。各ペアに異なる紙片を渡す。紙片には "If I had been born into a super rich family, ..." のように仮定法を用いた、主節のないIf-sentenceが記入されている。生徒は自分なりの回答を言うことで文を完成させる。ペアで二人とも言い終わったら紙片を右隣のペアに渡し、左隣のペアから別のシナリオの紙片を受け取る。再度新たなシナリオへの回答を言う。7ペアあり、シナリオは7つ使用したため、生徒は仮定法の文を7つ作成し練習したことになる。練習後、面白い回答について全体で共有する。

 

5. Two-side Discussion (Meaning-focused Output)

教室の左右の黒板にA、Bとそれぞれ大きく書く。仮定法を用いた買い物とお金に関する2択の質問をパワーポイントで表示し、生徒は答えのA、Bどちらに賛成するか考え、教室の左右に移動する。移動先で同じ意見をもつ生徒同士でディスカッションし、考えを深める。その後A、B双方の意見をお互いに発表しディスカッションする。

質問は以下の通り。

(1) If you were given 500 dollars, which one of these would you buy? A: boots  B: books

(2) If you were the mayor of Philadelphia and you were asked to raise the tax of one item, which tax would you choose? A: soda tax  B: alcohol tax

(3) If you saw a shoplifter in a store, what would you do? A: stop him  B: walk away

 

6. Giving Shopping Suggestions (Fluency Development)

生徒はペアになる。各ペアに異なるシナリオを配布する。シナリオの内容は、「いとこの結婚祝いに予算300ドルで贈り物をする」「ハロウィンに向け飾り付けと衣装を買いたいがお金がない」など7種類。各シナリオに応じ、どの店でどんな物を買うとよいかをペアで話し合う。1のStore Informationで示した店舗写真をスクリーンに再度表示しておく。話し合い終了後、別のペアと組み、それぞれのシナリオを説明しどこで何を買うか理由を含めて説明する。シナリオを別のペアと交換し、新たなシナリオを基に同じことを3度繰り返す。

 

「買い物」をテーマにしながらlanguage focusを設定し、それに沿った活動を考えるのは難しい。今回のlanguage focusである仮定法を必ずしも使用しない活動も行った。最後のFluency Developmentの活動で、生徒が仮定法を用いるようscaffoldした方が良かったような気もするが、思いつけなかった。重視したいのはNationの言うFour Strands (Meaning-focused Input, Meaning-focused Output, Language-focused Learning, Fluency Development) のバランスと、活動と活動との繋がりtask chainだが、今回は一貫して現実的な活動をバランス良く提供し、それぞれの結びつきも強化できたと思う。

トップの写真はフィリー名物Mural Artsの一つ Tree of Knowledge。背景のレンガのような模様も絵である。

www.muralarts.org

 

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