TESOL@ペンシルベニア大学

University of Pennsylvania 教育学大学院へのフルブライト奨学金留学

アメリカで英語を教える(上級クラス第8回)Health and Wellness

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Health and Wellnessが今回のテーマ。

PEDAL@GSE - PEDAL@GSE Classes

上級クラスを担当して苦労するのは、レベルと内容の吟味だ。病院へのアポイントメントを取ることや、簡単な症状の説明などは苦労せずにできる生徒が多い。さらに生徒の中には医療従事者もいる。少しでも何か力になるようにと思うと授業内容の精選が難しく、今週は指導案作成と教材作成のためのミーティングに7時間費やした。図書館が閉館するまで粘り、日曜日にもランチ持参で図書館で議論した。

PEDAL@GSEのレッスンは初級から上級クラスまで全てテーマが統一されている。上級クラスでHealth and Wellnessを扱うことは難しい。生徒は大人なのでRole-playもお医者さんごっこのようで気恥ずかしい。

先週のアンケートで、今週のHealth and Wellnessの授業で何を扱ってほしいか尋ねてみたところ、アメリカの医療保険や健康保険の仕組み、オバマケアについて深く知りたいという回答がたくさんあって頭を抱えた。私は留学生の立場で、それぞれ出身国の異なる大人の移民に対するアメリカの保険制度に精通しているはずもなく、所得などセンシティブな要素を含む話題なので保険制度を扱うことは見送った。アメリカで英語を教えるとはこういうことなのかと、力不足を痛感する。

フィラデルフィアに限らず、アメリカには移民が多い。法的書類を書くサポートをする団体や英語教育機関も多くある。多くの生徒が希望した、アメリカの医療保険制度について共に学ぶことは私にはできなかったが、そういったことにも対応している機関や英語教員には頭が下がる。

今回の授業は、さまざまな点で心に引っかかるものがあった。東京の高校で英語を教えていた時は、英語を通じて生徒の未来と向き合っていた。しかし、アメリカで英語を教えるということは、生徒の現実の生活と向き合うことなのだ。

 

第8回のPEDAL@GSE上級クラスの2時間の内容は次の通り。

1. Find Someone Who... (Introduction)

2. Vocabulary Card Game (Meaning-focused Input)

3. Flu Shot Video Listening (Meaning-focused Input)

4. Modal Verbs for Certainty & Expressions of Cause and Effect (Language-focused Learning)

5. Guessing the Name of Illness (Meaning-focused Output)

6. Symptom Puzzle (Meaning-focused Output)

7. Role-play (Fluency Development)

 

1. Find Someone Who... (Introduction)

生徒にワークシートを配布する。ワークシートには、指定された人物5人をクラスの中から探すように指示されている。5人とは、「インフルエンザ予防接種をすでに受けた人」「ベジタリアン」「オーガニック食物を食べるようにしている人」「毎日運動する人」「何らかのアレルギーがある人」。生徒は立ち上がって歩き回りお互いに質問をする。終了後全員で共有する。

 

2. Vocabulary Card Game (Meaning-focused Input)

病気の名前と簡単な説明が記されているカードを20枚セットにして生徒に渡す。生徒はペアになり、片方が1枚カードを取り病名を言わずに病気の症状を説明し、もう片方がその病名を当てる。交互に役割を交代して行う。知らなかったカードを別に分けておくように指示し、終了後全体で共有する。

 

3. Flu Shot Video Listening (Meaning-focused Input)

生徒に、インフルエンザ予防接種を今年受けたかどうか尋ねる。それぞれに、受けた理由と受けない理由を質問する。その後グループに分かれ、予防接種を受けた方が良い理由と受ける必要のない理由をブレインストームし、黒板に書かせる。全体で共有後、リスニング教材として予防接種を勧めるTVコマーシャルと、予防接種を勧めない研究者のインタビューをそれぞれYouTubeから1本ずつ紹介しスクリーンで観る。あらかじめ配布したワークシートを用い映像の内容を確認後、どちらの映像がより説得力があるか、自分はどちらに賛成するかを生徒に話し合わせる。

 

4. Modal Verbs for Certainty & Expressions of Cause and Effect (Language-focused Learning)

助動詞can, could, may, might, mustのそれぞれの確信度の高さを生徒にランキングさせる。病気に関するシナリオをパワーポイントで示し、生徒はその状況に合致する英文を作る。例えば、"Tom has a runny nose. He has a habit of leaving his window open while sleeping." (Tomが鼻をすすっている。Tomは寝るときに窓を開ける癖がある。)というシナリオに対し、"Tom has a runny nose. He might have left his window open while sleeping and that's why he caught a cold."など、Modal Verbs やCause and Effectを示す表現を用いて表す。

 

5. Guessing the Name of Illness (Meaning-focused Output)

生徒はペアになる。生徒に10枚セットのカードを渡す。カードには、病気の症状と原因が簡単に書かれており、片方がそれを説明する。もう片方はその情報を基に、病名を推測する。例えば、"I ate a lot of seafood for lunch, and I am not feeling well now."という状況に対し "You might have food poisoning."や"You might have eaten too much."など。ここで用いられる病名は2のVocabulary Card Gameで確認済みの語彙である。

 

6. Symptom Puzzle (Meaning-focused Output)

生徒を3人グループに分けてInformation Gapを用いた論理ゲームを行う。3人のうち1人は情報の半分をもち、1人はもう半分をもち、残る1人は情報を統合してパズルを解く。情報の内容は、病院の病室に入院する5人の患者の名前、病名、症状、外見、病因である。情報を適切に結びつけ、グループ3人全員が質問をし合い協力しないと解けない構成になっている。

 

7. Role-play (Fluency Development)

生徒を2つのグループに分け、一方を患者役、もう一方を医師役と設定し、向かい合わせの2列で着席させる。患者役にはシナリオを渡し、医師役には症状や病因と病名が書かれているリストを配布する。患者役の生徒は向かい側に座る医師役の生徒に症状を説明する。病気に関する表現と、今回のlanguage instructionで学んだmodal verbsやcause and effectの表現を用いる。医師役の生徒は診断し病名を伝え、助言をする。座席を移動しシナリオを異なるものにし、再度行う。終了後、患者役と医師役を交代しシナリオを替え、もう2ラウンド行う。シナリオは、arthritis, athlete's foot, ear infections, diabetes, food allergy, insomnia, stomach flu, stomach ulcerの8つを用意した。

患者役のシナリオ例

symptom: itchy toes, peeling skin on the toes

cause: wore my brother's socks (very sure), wore them for 3 days

length: a week

患者役の説明例

"I have itchy toes and peeling skin on them! It's been a week or so. It must be because I wore my brother's socks for 3 days."

医師役の応答例

"You have athlete's foot. I'll prescribe medication for you, and I would recommend you soak your feet in salt water."

 

今回は一つ一つの活動のつながりが薄く、ランダムに詰め込んだ感じのする2時間になってしまった。task chainを意識した授業づくりを心がけてはいるのだが、毎回生徒に助けられてなんとかやっている。