TESOL@ペンシルベニア大学

University of Pennsylvania 教育学大学院へのフルブライト奨学金留学

MITインフォメーションツアー

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MITのアドミッションインフォメーションツアーに参加した。ハーバード大学から徒歩圏にあるため、ハーバード大学のインフォメーションツアー参加後、同じ日に参加することができた。

受付時に、可愛いのか可愛くないのか分からない公式マスコットのビーバーが描かれている紙をもらい、そこにはセッション終了後のツアーグループの番号が書かれている。このシステマティックな感じもいかにも工科大学らしい。自然界のエンジニアであるビーバーがマスコットというのも、MITらしくて素敵だ。

 

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数百人が参加した説明会は、アドミッションオフィサーの女性による説明で進められた。しかしただのアドミッションオフィサーではない。自身もMITの卒業生であり、さらには、自身の子どもたちもMITの学生であるというから驚きだ。

 

MITのモットーは Mens et Manus (Mind and Hand) だそうだ。ある特定のフィールドだけではなく、幅広くバランスのとれた教育を重視している。どんな分野であれ、卒業後はさまざまな人とコミュニケーションをとりながら課題に取り組むことになるため、専門分野の実践を重視しながらも、humanitiesやsocial scienceやartsも必修だ。

この考え方は建物にも表れている。すべての建物が独立しておらず、互いに連結しているため往き来が自由だ。教授陣も学生もエンジニアも、すべての人が建物内で出会い、協力し合うことをねらいとしているそうだ。

 

説明会の中で印象的だった言葉は次だ。
Push the boundaries
Think big
Invent, think, discover in different fields
現在と未来を見据えたコラボレーションを実現するために、さまざまなフィールドから異なる才能をもった学生を取りたいとのことだった。課題解決能力とクリティカルシンキングを大切に育てているそうだ。

 

ケンブリッジという土地もMITの強みだ。スーパーカンパニーに名を連ねる10社のうち9社がKendall Squareにオフィスを持つ。Kendall Squareは "just a step away" まさに真っ隣だ。ちなみにKendall SquareはWikipediaによると、

Kendall Square has been called "the most innovative square mile on the planet," in reference to the high concentration of entrepreneurial start-ups and quality of innovation which have emerged in the vicinity of the square since 2010.

ということで、「地球上で最も革新的な1平方マイル」と呼ばれているらしい。スタートアップ企業も多く集まり、どんな企業もMITの学生を欲しがるからインターンシップの機会も数多い。

 

説明会の後は40人ほどのグループに分かれてツアーへ。私のグループは、2年生の化学専攻の男子学生が案内してくれた。私のグループの参加者はほぼ全員高校生とその保護者で、あとは観光客が少数いたが、学校関係者は私だけだった。

ツアーで回る箇所はきっとあらかじめ決まっているのだろう。MIT学生の有名なHackの説明をしながら各建物を回っていく。ハックとは、MITらしい手の込んだ高度なイタズラのこと。ドームの上にパトカーを乗せたり、学長室を消したり、ロビーの吹き抜け天井近くの床から数メートルの場所にある文字を変えたり、建物の窓をテトリスにしたりとハイレベルだ。

IHTFP Hack Gallery: Welcome to the IHTFP Gallery!

 

MITのミッションは明確で、その実現のために行っている教育方針もまた明確だと感じた説明会であった。

 

 

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ハーバード大学インフォメーションツアー

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先日ボストンへ行き、ハーバード大学のアドミッションインフォメーションセッションに参加してきた。さすがハーバードという貫禄たっぷりの洗練されたセッションであり、強いメッセージ性を持っていた。

 

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午前10時から始まるセッションなのだが、開始15分前からハーバード公式ビデオを流し始め、早く到着した人に嬉しい配慮。そしてそのビデオがまた、よく考えられ、計算し尽くされている内容なのだ。

公式ビデオに登場する学生や卒業生は多様性を体現している。エスニシティ、人種、社会的バックグラウンド、ジェンダーへの配慮もばっちりだ。移民として入国した学生も登場するし、財政援助の手厚さのアピールも忘れない。

マットデイモンもビデオに登場する。カジュアルに卒業生Mattとして体験を語るのが笑える。

そしてその後、インフォメーションセッションに登壇したアドミッションオフィサーが、「ビデオにマットが出ていたけど、実際彼はハーバードを卒業していません。ビルゲイツもマークザッカーバーグも退学しています。ハーバードを退学すると億万長者になれるのです」と言って会場の爆笑を誘っていた。鉄板ネタなのだろう。

 

説明会では、アドミッションオフィサーの他に学生2人が登壇する。ここでもジェンダーやエスニシティなど多様性への配慮がうかがえる。2人の専攻も異なるし、インターンシップの経験も全く異なる。

アドミッションオフィサーと、学生とのパネルディスカッションといった様子で説明会が進行する。登壇した学生のうち1人はセネガルへのインターンシップ経験があるらしい。

 

留学制度や奨学金や専攻の決定や出願書類やエッセイで重視する点など、お決まりの話題で進められていくが、他の大学と決定的に異なる点があると感じた。それは「人」にフォーカスしている点だ。「うちの大学ではこんなことができます」というアプローチではなく、学生をハーバードコミュニティの大切な一員と考え、個々人がそのコミュニティの中でどう成長していくか、どんな関係を紡ぎ出していくかを重視しているように思われた。

 

インフォメーションセッションの後は、30人ほどのグループに分かれてキャンパスツアー。私たちのグループは、これから2年生になる学生が担当してくれた。

 

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全体の参加者は数百人規模だ。ツアーガイドの学生も大勢いる。夏はいつもこんなに多くいるのかと聞くと、志願者だけではなく観光客も来るので毎日数百人の参加になるそうだ。

 

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写真のように、各グループで図書館や学生寮など決められたコースを回り、John Harvardの像の嘘について説明があり、インフォメーションセッションから始まる全2時間にわたるツアーを終了した。

 

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ツアーガイドを務めてくれた学生に、ハーバードに入学して何が最も良かったことか尋ねてみた。彼女は、出会った人々すべて、同級生も教授もすべて素晴らしい人たちだ、と即答した。

 

人が財産、人がリソース、というのは、ハーバードではアドミッションプロセスで卒業生のインタビューがあることとも繋がってくると思う。

 

 

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Spring Term 大学院授業の振り返り4 言語評価法

春学期に履修したTESOL専攻の4つの科目のうち、選択科目の1つであるLanguage Assessment言語評価法について書こうと思う。

英語の授業で訳読方式を私の周囲でほとんど見かけなくなってからしばらく経つ。授業ではコミュニカティブな活動が多くなり、意見を発表したり内容をまとめたりプレゼンテーションを行ったりすることが増えた。

さらに2020年度の大学入試改革である。しばらくは移行期間ということで、従来の英語試験も併存されるようだが、スピーキングも含めた4技能を測る民間試験の大学入試への活用が本格的に始まるため、コミュニカティブな授業の増加が見込まれる。(あるいは、学校教育では行われず民間試験のための塾や予備校に丸投げになるかも、という懸念もある。)

さて、コミュニカティブな授業やアウトプット活動を重視する授業を行ったらその評価もコミュニカティブな能力を測るテストでなければならない。スピーキング能力とライティング能力をどのように計測したらよいのか、そして4技能を統合させた活動とその評価はどのように行ったらよいのか、特に日本の学校教育の場で、クラス40人や学年320人を公平、公正で効果的に評価する現実的で持続可能な方法へのヒントを得たいと思い、この授業を履修した。

 

Week 1. イントロダクション
論文1本。言語評価のさまざまな種類と、それぞれの利点と問題点について概要の講義と議論。

 

Week 2. 言語評価の理論的枠組み
論文5本。主にvalidityとreliabilityの観点から、さまざまな言語評価法を分析、議論。

 

Week 3. リスニングの評価
論文4本。リスニング能力をどう測るか議論。評価法として、ディクテーションやインタラクションが適切かどうかを理論的背景から分析、議論。

 

Week 4. スピーキングの評価
論文6本。スピーキング能力をどう測るか議論。holisticな方法とanalyticな方法の両方を比較し、実際のスピーキングのサンプル音声を評価し議論。

 

Week 5. リーディングと文法・語彙の評価
論文6本。リーディング能力をどう測るか議論。訳出はリーディング能力を適切に計測できるか理論的枠組みから照らし合わせ分析。語彙サイズの計測方法、四択の妥当性についても議論。

 

Week 6. ライティングの評価
論文5本。ライティング能力をどう測るか議論。コンピュータによる評価と人間の評価の差異、トピックによるパフォーマンスの差異、評価者間での差異について議論。

 

Week 7. タスク中心の評価とLSPのための評価
論文5本。タスクを与えることによる評価法と、一般的なテストとを比較し議論。Language for Specific Purposes(LSP)での評価法、例えば香港の英語教員採用試験問題やイギリスでのESL教員の試験を分析し議論。

 

Week 8. プラグマティクスの評価
論文5本。プラグマティクス能力をどう測るか議論。実用性、authenticityを柱に、実際の英語の授業でどのように評価を組み込めるか議論。

 

Week 9. グループプレゼンテーション1
グループでコンテクストを自由に設定し、英語能力を測定するためのテストを作成し、プレゼンテーションを行う。聞き手はその評価を行う。

 

Week 10. グループプレゼンテーション2
Week 9の続き。グループでコンテクストを自由に設定し、英語能力を測定するためのテストを作成し、プレゼンテーションを行う。聞き手はその評価を行う。

 

Week 11. alternative assessment
論文7本。ポートフォリオ、ピア・アセスメント、自己評価など、従来の評価法とは異なる評価法の妥当性と実用性について議論。

 

Week 12. 若年層の評価法
論文5本。幼児や小学生など、従来のテストでは評価しきれない若年層の英語能力をどう評価するか具体的な手法について議論。子ども向けの英語テストであるTOEFL Primaryなどをサンプルに分析し議論。

 

Week 13. テストの影響
論文4本。テストや評価の学習者へ与える影響と、実際の授業で行われていることと評価の内容との連関について議論。

 

Week 14. 評価法の今後
論文5本。コンピュータによる評価や、World Englishesという観点から今後の評価法の可能性について議論。

 

その他の課題

1.グループ課題(第3、4、5、6、7週)
5人グループで、毎週異なるテーマ(リスニング、スピーキング、ライティング、リーディング、教員採用試験)に沿って5週間行われる。実際の問題サンプルや解答サンプルを分析し理論的枠組みと連関させてレポートを書く。

 

2.テスト開発プレゼンテーションとレポート提出
5人グループで自由にコンテクストを設定し、評価のためのテストを作成し30分間のプレゼンテーションを行う。プレゼンテーションの内容には、context, purposes, test-takers, target language use, administraion, construct, sample questions, rubric, validity, reliability, authenticity, washback, limitationを含めなければならない。私たちのグループは、フィラデルフィアに住む難民と移民の大人を対象とした英語教育機関での使用を想定した、短時間で4技能全てを測定するテストを作成した。他には、アメリカで働く英語を母語としない看護師の英語スピーキング能力試験を開発したり、アジアの民間英語教育機関のEFL教員採用試験を開発したグループもあった。プレゼンテーション終了後に20分間のディスカッションとQ&Aを行う。その後、このディスカッションと聞き手から提出されたフィードバックシートを元に修正を加えたテストとレポートを提出する。

 

3.評価に関する最終レポート
各自で自由にテーマを設定し、評価に関する研究レポートを提出。私は、東京都で実施している英語教員採用試験の筆記試験と実技試験について理論的枠組みから分析した。当初は冒頭に書いた通り、40人クラス規模の日本の高校で継続的に実施できるスピーキングとライティングのテストの分析、開発、展望を論じる予定でいたが、第7週で世界各地の英語教員採用試験や現職英語教員能力試験や英語教員資格取得の試験等を分析し、その多様さが興味深かったこともあり、このテーマとした。高校でのアウトプット活動の評価は復職後に日常的に行うことになるので、当時最も関心を持ち、新たな視点を得られそうなテーマを論じ提出した。

 

 

言語評価といってもその評価の枠組みは実に多様で、スキルによって評価方法も異なるし、対象者の年齢や英語レベル、評価の目的などコンテクストによって適切な評価方法も変わってくる。この授業では全体を網羅し、必要な情報やリソースを得られたので、自分の教えるコンテクストで評価方法を再構築する際のヒントが多く得られた。最終成績はAをいただいたが、実際に日本の学校教育の現場で生徒の英語の4技能を多様な手法で評価する仕組みを構築していくには、多くの試行錯誤が必要になるだろうと思う。

 

 

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