TESOL@ペンシルベニア大学

University of Pennsylvania 教育学大学院へのフルブライト奨学金留学

ハーバード大学インフォメーションツアー

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先日ボストンへ行き、ハーバード大学のアドミッションインフォメーションセッションに参加してきた。さすがハーバードという貫禄たっぷりの洗練されたセッションであり、強いメッセージ性を持っていた。

 

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午前10時から始まるセッションなのだが、開始15分前からハーバード公式ビデオを流し始め、早く到着した人に嬉しい配慮。そしてそのビデオがまた、よく考えられ、計算し尽くされている内容なのだ。

公式ビデオに登場する学生や卒業生は多様性を体現している。エスニシティ、人種、社会的バックグラウンド、ジェンダーへの配慮もばっちりだ。移民として入国した学生も登場するし、財政援助の手厚さのアピールも忘れない。

マットデイモンもビデオに登場する。カジュアルに卒業生Mattとして体験を語るのが笑える。

そしてその後、インフォメーションセッションに登壇したアドミッションオフィサーが、「ビデオにマットが出ていたけど、実際彼はハーバードを卒業していません。ビルゲイツもマークザッカーバーグも退学しています。ハーバードを退学すると億万長者になれるのです」と言って会場の爆笑を誘っていた。鉄板ネタなのだろう。

 

説明会では、アドミッションオフィサーの他に学生2人が登壇する。ここでもジェンダーやエスニシティなど多様性への配慮がうかがえる。2人の専攻も異なるし、インターンシップの経験も全く異なる。

アドミッションオフィサーと、学生とのパネルディスカッションといった様子で説明会が進行する。登壇した学生のうち1人はセネガルへのインターンシップ経験があるらしい。

 

留学制度や奨学金や専攻の決定や出願書類やエッセイで重視する点など、お決まりの話題で進められていくが、他の大学と決定的に異なる点があると感じた。それは「人」にフォーカスしている点だ。「うちの大学ではこんなことができます」というアプローチではなく、学生をハーバードコミュニティの大切な一員と考え、個々人がそのコミュニティの中でどう成長していくか、どんな関係を紡ぎ出していくかを重視しているように思われた。

 

インフォメーションセッションの後は、30人ほどのグループに分かれてキャンパスツアー。私たちのグループは、これから2年生になる学生が担当してくれた。

 

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全体の参加者は数百人規模だ。ツアーガイドの学生も大勢いる。夏はいつもこんなに多くいるのかと聞くと、志願者だけではなく観光客も来るので毎日数百人の参加になるそうだ。

 

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写真のように、各グループで図書館や学生寮など決められたコースを回り、John Harvardの像の嘘について説明があり、インフォメーションセッションから始まる全2時間にわたるツアーを終了した。

 

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ツアーガイドを務めてくれた学生に、ハーバードに入学して何が最も良かったことか尋ねてみた。彼女は、出会った人々すべて、同級生も教授もすべて素晴らしい人たちだ、と即答した。

 

人が財産、人がリソース、というのは、ハーバードではアドミッションプロセスで卒業生のインタビューがあることとも繋がってくると思う。

 

 

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Spring Term 大学院授業の振り返り4 言語評価法

春学期に履修したTESOL専攻の4つの科目のうち、選択科目の1つであるLanguage Assessment言語評価法について書こうと思う。

英語の授業で訳読方式を私の周囲でほとんど見かけなくなってからしばらく経つ。授業ではコミュニカティブな活動が多くなり、意見を発表したり内容をまとめたりプレゼンテーションを行ったりすることが増えた。

さらに2020年度の大学入試改革である。しばらくは移行期間ということで、従来の英語試験も併存されるようだが、スピーキングも含めた4技能を測る民間試験の大学入試への活用が本格的に始まるため、コミュニカティブな授業の増加が見込まれる。(あるいは、学校教育では行われず民間試験のための塾や予備校に丸投げになるかも、という懸念もある。)

さて、コミュニカティブな授業やアウトプット活動を重視する授業を行ったらその評価もコミュニカティブな能力を測るテストでなければならない。スピーキング能力とライティング能力をどのように計測したらよいのか、そして4技能を統合させた活動とその評価はどのように行ったらよいのか、特に日本の学校教育の場で、クラス40人や学年320人を公平、公正で効果的に評価する現実的で持続可能な方法へのヒントを得たいと思い、この授業を履修した。

 

Week 1. イントロダクション
論文1本。言語評価のさまざまな種類と、それぞれの利点と問題点について概要の講義と議論。

 

Week 2. 言語評価の理論的枠組み
論文5本。主にvalidityとreliabilityの観点から、さまざまな言語評価法を分析、議論。

 

Week 3. リスニングの評価
論文4本。リスニング能力をどう測るか議論。評価法として、ディクテーションやインタラクションが適切かどうかを理論的背景から分析、議論。

 

Week 4. スピーキングの評価
論文6本。スピーキング能力をどう測るか議論。holisticな方法とanalyticな方法の両方を比較し、実際のスピーキングのサンプル音声を評価し議論。

 

Week 5. リーディングと文法・語彙の評価
論文6本。リーディング能力をどう測るか議論。訳出はリーディング能力を適切に計測できるか理論的枠組みから照らし合わせ分析。語彙サイズの計測方法、四択の妥当性についても議論。

 

Week 6. ライティングの評価
論文5本。ライティング能力をどう測るか議論。コンピュータによる評価と人間の評価の差異、トピックによるパフォーマンスの差異、評価者間での差異について議論。

 

Week 7. タスク中心の評価とLSPのための評価
論文5本。タスクを与えることによる評価法と、一般的なテストとを比較し議論。Language for Specific Purposes(LSP)での評価法、例えば香港の英語教員採用試験問題やイギリスでのESL教員の試験を分析し議論。

 

Week 8. プラグマティクスの評価
論文5本。プラグマティクス能力をどう測るか議論。実用性、authenticityを柱に、実際の英語の授業でどのように評価を組み込めるか議論。

 

Week 9. グループプレゼンテーション1
グループでコンテクストを自由に設定し、英語能力を測定するためのテストを作成し、プレゼンテーションを行う。聞き手はその評価を行う。

 

Week 10. グループプレゼンテーション2
Week 9の続き。グループでコンテクストを自由に設定し、英語能力を測定するためのテストを作成し、プレゼンテーションを行う。聞き手はその評価を行う。

 

Week 11. alternative assessment
論文7本。ポートフォリオ、ピア・アセスメント、自己評価など、従来の評価法とは異なる評価法の妥当性と実用性について議論。

 

Week 12. 若年層の評価法
論文5本。幼児や小学生など、従来のテストでは評価しきれない若年層の英語能力をどう評価するか具体的な手法について議論。子ども向けの英語テストであるTOEFL Primaryなどをサンプルに分析し議論。

 

Week 13. テストの影響
論文4本。テストや評価の学習者へ与える影響と、実際の授業で行われていることと評価の内容との連関について議論。

 

Week 14. 評価法の今後
論文5本。コンピュータによる評価や、World Englishesという観点から今後の評価法の可能性について議論。

 

その他の課題

1.グループ課題(第3、4、5、6、7週)
5人グループで、毎週異なるテーマ(リスニング、スピーキング、ライティング、リーディング、教員採用試験)に沿って5週間行われる。実際の問題サンプルや解答サンプルを分析し理論的枠組みと連関させてレポートを書く。

 

2.テスト開発プレゼンテーションとレポート提出
5人グループで自由にコンテクストを設定し、評価のためのテストを作成し30分間のプレゼンテーションを行う。プレゼンテーションの内容には、context, purposes, test-takers, target language use, administraion, construct, sample questions, rubric, validity, reliability, authenticity, washback, limitationを含めなければならない。私たちのグループは、フィラデルフィアに住む難民と移民の大人を対象とした英語教育機関での使用を想定した、短時間で4技能全てを測定するテストを作成した。他には、アメリカで働く英語を母語としない看護師の英語スピーキング能力試験を開発したり、アジアの民間英語教育機関のEFL教員採用試験を開発したグループもあった。プレゼンテーション終了後に20分間のディスカッションとQ&Aを行う。その後、このディスカッションと聞き手から提出されたフィードバックシートを元に修正を加えたテストとレポートを提出する。

 

3.評価に関する最終レポート
各自で自由にテーマを設定し、評価に関する研究レポートを提出。私は、東京都で実施している英語教員採用試験の筆記試験と実技試験について理論的枠組みから分析した。当初は冒頭に書いた通り、40人クラス規模の日本の高校で継続的に実施できるスピーキングとライティングのテストの分析、開発、展望を論じる予定でいたが、第7週で世界各地の英語教員採用試験や現職英語教員能力試験や英語教員資格取得の試験等を分析し、その多様さが興味深かったこともあり、このテーマとした。高校でのアウトプット活動の評価は復職後に日常的に行うことになるので、当時最も関心を持ち、新たな視点を得られそうなテーマを論じ提出した。

 

 

言語評価といってもその評価の枠組みは実に多様で、スキルによって評価方法も異なるし、対象者の年齢や英語レベル、評価の目的などコンテクストによって適切な評価方法も変わってくる。この授業では全体を網羅し、必要な情報やリソースを得られたので、自分の教えるコンテクストで評価方法を再構築する際のヒントが多く得られた。最終成績はAをいただいたが、実際に日本の学校教育の現場で生徒の英語の4技能を多様な手法で評価する仕組みを構築していくには、多くの試行錯誤が必要になるだろうと思う。

 

 

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Spring Term 大学院授業の振り返り3 Communication and Culture in Context

春学期は、必修科目の2つ(教育における社会言語学、第二言語習得)が理論ベースだったため、選択科目は実践的なものを選んだ。

その選択科目のうちの一つであるCommunication and Culture in Contextでは、言語教育とは単に言語を教えるだけではなく、学習者がさまざまな場でコミュニケーションを可能にするように導くことである、という考え方を基盤とする。そのためには、インタラクションのしきたり、丁寧さ、ジャンル、コミュニケーションのための戦略などを学習者が身につけ、多様な場や社会的立場やアイデンティティを踏まえた上でコミュニケーションの目的を達成する必要がある。この授業では、それらを理論的枠組みの中で捉え、さらに教育者としてどのように指導するかをたっぷりと学んだ。

 

Week 1. イントロダクション intercultural competenceとは
論文1本。記号としての言語ではなく、社会におけるコミュニケーションの中での言語という観点から言語を定義、議論。同じ観点から文化を定義、議論。

 

Week 2. グローバル世界における言語教育とintercultural competence
論文3本。多文化共生、グローバル世界における協働能力をどのように言語教育の中で育てていくか議論。

 

Week 3. 言語と文化の関連と言語教育
論文3本。多様な背景を持つ人々とどのように交流し、多文化共生のための価値観や言語能力を育てていくか議論。

 

Week 4. プラグマティクス上でのコミュニケーションの失敗と言語教育
論文3本。プラグマティクスの面でコミュニケーションにおける誤解や失敗の発生を取り上げ、それらをどのように言語教育に取り込んでいくか議論。

 

Week 5. intercultural interactional competenceとは何か
論文3本。多文化間における交流を行うために必要な力を定義し議論。

 

Week 6. intercultural interactional competenceをどう育てるか(伝統的手法)
論文3本。多文化間における交流を行うために必要な力を言語教育の場でどう育てるかについて、プラグマティクスの立場など、伝統的な手法から分析し議論。

 

Week 7. intercultural interactional competenceをどう育てるか(現代的手法)
論文4本。多文化間における交流を行うために必要な力を言語教育の場でどう育てるかについて、多文化共生、アイデンティティ、socialization、community normといった広い現代的視点で分析し議論。

 

Week 8. intercultural interactional competenceをどう育てるか(実際の授業方法)
論文4本。intercultural interactional competenceを育てるために英語の授業で組み入れられる授業方法やタスク、アクティビティの意義や目的、実施方法について議論。

 

Week 9. 授業デモンストレーションのプレゼンテーション
大学院の授業外で行われる、実際の生徒を対象にしたintercultural interactional competenceのための授業の指導案と活動をまとめ、プレゼンテーションを行う。

 

Week 10. ユーモアを言語教育で教える事例
論文3本。intercultural interactional competenceの観点から、ユーモアが言語教育のカリキュラム内に組み入れられたケーススタディを分析、議論。

 

Week 11. ユーモアを英語教育で教える効果
論文3本。intercultural interactional competenceの観点から、英語教育でユーモアを教えることによる効果と、具体的な手法について分析、議論。

 

Week 12. ユーモアを教える
論文3本。英語教育の場でユーモアを教える具体的手法、タスク、アクティビティ、およびその背景にある理論について分析、議論。

 

Week 13. 授業デモンストレーションのプレゼンテーション
大学院の授業外で行われる、実際の生徒を対象にしたユーモアの授業の指導案と活動をまとめ、プレゼンテーションを行う。

 

Week 14. intercultural interactional competenceの評価法
論文4本。生徒のintercultural interactional competenceをどう評価し、授業の中にその評価方法を組み入れるかについて議論。

 

Week 15. 最終プロジェクトプレゼンテーション
各自でintercultural interactional competenceを育てるための授業案、研究など自由に最終プロジェクトを立ち上げ、そのプレゼンテーションを行う。

 

 

その他の課題

1.リーディングレスポンス(隔週)
隔週で、2週間分の課題論文に対する発展的なレスポンスを提出。教授から、次年度の授業で生徒に示すモデルとしての使用を依頼されてかなり嬉しかった。

 

2.授業デモンストレーション(2回)
秋学期に教えていたPEDAL@GSEの大人の生徒を対象に、intercultural interactional competenceをテーマとした授業を2回、グループで行った。

アメリカで英語を教える(番外編1)嫌われない不満や文句の表現 - TESOL@ペンシルベニア大学

アメリカで英語を教える(番外編2)sarcasmの使い方 - TESOL@ペンシルベニア大学

1回目のテーマはspeech act(言語活動)で、私たちのグループは、大人としてふさわしい、丁寧な不満や文句の表現方法を教えた。2回目のテーマはユーモアで、私たちのグループはsarcasm(皮肉めいた、ユーモアや冗談も含む表現)を教えた。

 

3.授業デモンストレーションのレポート(2回)
上記の授業デモンストレーションについて、理論的枠組み、指導案、活動の設定理由、コンテクスト、実際の授業で起きたこと、うまくいったこととその理由、うまくいかなかったこととその理由等を読んだ論文と照らし合わせ、連関させてグループでレポートを提出。

 

4.最終プロジェクト
自由にテーマを設定し、intercultural interactional competenceを育てるためのプロジェクトを作成、またはそれに関する実験を行い報告する。私は、勤務校で実施している海外リーダーシップ研修の事後ワークショップ “Post Global Leadership Program: Enhancing Intercultural Interactional Competence” を作成し、プラグマティクス、アイデンティティ、チームワークを柱とした4日間のワークショップの指導案と教材を提出した。クラスメートの作成したプロジェクトはさまざまで、アメリカに住む留学生の就職時の履歴書の書き方や面接のためのワークショップ、アメリカに移民として暮らし始めたばかりの大人対象のワークショップ等、プレゼンテーションを聞くだけでワクワクするようなプロジェクトが数多くあった。中にはHow are you?に対する反応のデータを大量にとり、native speakerとnon-native speakerとの間の差異を実験報告としてまとめたプロジェクトもあった。

 

 

 

最終成績はA-をいただいた。1回目の授業デモンストレーションで内容を盛り込みすぎて消化不良になってしまったことと、そこでのグループワークがうまくいかなかったことが響いた。教授が私たちの授業を観察に来た際、グループメンバーと授業中にうまく協力できていないことを指摘された。多国籍の複数の生徒とグループワークをするのは本当に難しい。しかも初対面のメンバーと共に授業案を作成し、実際に行うのだ。グループワークでもまさにCommunication and Culture in Contextを学んだ。

 

この授業は私にとってeye-openingだった。

日本の高校で教えてきたので、生徒のほぼ全員が日本語を母語とし、文化的背景や社会的立場もある程度均質であるという環境に慣れきっていた。

しかし、秋学期に3か月多国籍の大人を対象に英語を教え、アイデンティティや文化背景、価値観や母語の違いによる言語学習の違いや、それによって教室で生まれる発展的なコラボレーションの面白さを体験した。多様な生徒が教室にいることこそがアドバンテージだと思えるようになった。

そこで大学院でのこの授業では、多様な生徒を対象に、言語教育を通じた協働や多文化共生やアイデンティティの構築を促す実践的な授業案とその理論的枠組みを学ぶことができた。ここで学んだことは、ESL環境のみならず日本のようなEFL環境でも活用し実践できると信じている。

 

 

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