TESOL@ペンシルベニア大学

University of Pennsylvania 教育学大学院へのフルブライト奨学金留学

アメリカで英語を教える(番外編2)sarcasmの使い方

春学期の大学院授業の課題の一つとして、再度PEDAL@GSEで英語を教える機会を得た。

PEDAL@GSE - PEDAL@GSE Classes

今回のテーマは「ユーモア」ということで、アメリカのユーモアの理解と、それを実際に使ってみるというのが大きな流れだ。

ユーモアといってもいろいろだ。いわゆるアメリカンジョーク、ダジャレや言葉遊びの pun、皮肉とよく訳される sarcasm など、幅が広い。人種やエスニシティ、ジェンダー、宗教等に関わるセンシティブな表現も多い。大学院の授業では、それらと言語教育や異文化理解、多文化共生とどう繋げていくのかを学びながら、最後のグループプロジェクトとして30分間の授業を行った。

 

大学院の最初の授業で、「最後のグループプロジェクトはユーモアを教える授業をやってもらいます」と教授に言われ、まず最初に頭に浮かんだ疑問が「ユーモアって教えられるの…?」だった。そしてその後に、「どうやって、何を教えるの…??」と思った。アメリカのユーモアを教えるというのは全く新しい発想だし、未知のフィールドだった。

 

今回の対象クラスは中級クラス。3人グループで30分間教えるが、私たちの前に教えるもう一つの3人グループと相談し、2つのグループで60分間の授業にした。前半は「sarcasm を知る」、後半の私たちは「sarcasm を使う」をテーマとした。

 

ユーモアを含む表現は日常生活でも多用するし、映画やテレビドラマのセリフでしょっちゅう出てくるが、特に sarcasm は欧米出身でない人にはわかりづらいものだろうと思う。そんなわけで、今回の中級クラスの授業のテーマを sarcasm と設定した。

最上級クラスでは、雑誌 The New Yorker の1コママンガのキャプションを作る、というユーモアの授業にしたそうで、レベルの高さに驚いた。

 

前半の30分間の「sarcasmを知る」は次の流れで行われた。

 1.フレンズの映像を用い、sarcasm を使う際にどのような表現とシグナルが用いられるかをディスカッションする。その映像内では、実際の状況と反対の表現、大げさなイントネーション、視線、ウインクなどが用いられ、生徒同士で気づいたことを話し合ってもらった。

2.sarcasm をこれまでに使ったことがあるか、または使われているのを聞いたことがあるかをペアでディスカッションする。終了後全体で共有する。言葉での sarcasm のほか、「好ましくない状況が起きた時のゆっくりした拍手」など、言葉以外の sarcasm も共有された。

3.ファシリテーターが sarcasm の説明をし、モデルを示す。大げさなイントネーション、逆に平坦なイントネーション、スピードの変化、目の動きをモデリングする。

4.シンプソンズの映像を用い、sarcasm がどのように用いられているか、どのような表現を使っていたか、表情やジェスチャー等、気づいたことをディスカッションする。

5.映画やTVドラマから短い映像を3本見せ、スクリプトをヒントとして読みながら、その場面でどのような sarcasm が用いられていたかディスカッションする。

 

前半グループから交代し、私たちの30分間の「sarcasmを使う」は以下の流れで行った。

1.パワーポイントを用い、6種類の異なる状況を示し、どの状況で sarcasm を使うのが適切かディスカッションする。6種類の状況は、葬儀、上司との面談、友人同士での会合等。sarcasm が許される場所、人間関係、状況について説明する。

2.生徒の母国で sarcasm を使うのはよくあることかどうかペアでディスカッションし、その後全体で共有する。常に使うと答えたヨーロッパ出身の生徒もいれば、冗談にしても皮肉めいた表現をしたくない、と答えたアジア出身の生徒もいた。

3.パワーポイントを用いながら、sarcasm を使う際の3つのよくある表情を示す。smirk and side eyes(ニヤリとした皮肉めいた笑顔で、片側の口角だけ上げ、横目で見る)、eye rolls(眼球を上に動かし白目をむく感じ)、raising eyebrows(眉を上げる)を紹介し、練習する。

4.前半30分間の授業で示した、声の変化を練習する。特にイントネーションとスピードに留意しながら、"Yeah, great!" "Fantastic!" などを、大げさに言ったり反対に平坦に言ったりする練習をする。さらに、3で示した表情をつけながら練習する。

5.sarcasm を sarcasm らしくする2つの方法を示す。ここでは、「OhやWow 等のinterjectionの使用」「reallyやabsolutelyなどの強い副詞や形容詞」を紹介し、"Oh, that's REALLY nice." 等を表情と声の変化を加え練習する。

6.sarcasm を使うのにふさわしい、よくある状況を2つ説明する。「誰かが何かまずいことをした時」「誰かが何か当たり前のことを言った時」を紹介し、状況をパワーポイントで示した後、どのような sarcastic expression を言うかペアで話す。

7.教室の5か所に5つの大きな紙をあらかじめ張っておく。それぞれの紙には、異なる状況が書かれている。生徒を5つのグループに分け、各グループはそれぞれ紙の前に移動する。生徒は紙に書かれている状況のシナリオを読み、その状況に対応する sarcasm を含んだセリフをグループで話し合い、紙に書き込む。終了後、各グループは時計回りに移動し、別のシナリオに関して同様のことを行う。5回繰り返し、すべての生徒がすべてのシナリオに対し sarcasm を含むセリフを書き込む。終了後、各グループに発表してもらう。

 

今回は大学院の授業の一環として飛び込みで行った授業であったため、相手は初対面の生徒だ。初めて出会う生徒相手にeye rollsを実演して白目をむき、ユーモアを教えるのは本当に気まずかった。 生徒にしてみても、「誰この人?」と思う相手にいきなりユーモアなど教えられて困っただろう。

生徒の出身地域はさまざまで、文化も考え方もその人によって異なり、そもそも sarcasm を使いたいかどうかも人によって異なる。sarcasm を使うことによって深刻な雰囲気を緩和したり、友情や仲間意識を高めたりする効果があるため、ユーモアを会話に組み込むことによる利点をもっと強調したらよかったと思う。

 

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