TESOL@ペンシルベニア大学

University of Pennsylvania 教育学大学院へのフルブライト奨学金留学

アメリカで日本語チャット(第10回)「ご縁」を説明する

f:id:upenntesolfulbright:20161203110341j:plain

学期末を迎え最終試験に追いたてられ、冷たい雨も相俟って日本語チャットの参加者も常連のアメリカ人学生1人だけ。彼は、先日のボストンキャリアフォーラムで面接をいくつかこなした結果、年明けから日本での勤務を開始することになったとのことで、ボスキャリの報告と新生活への展望について大いに語り合った。

彼の所属する大学院のプログラムでは、12月に卒業が可能である。私の所属する教育大学院 Graduate School of Education TESOL Programは修了するために最低2年間必要で、9月に入学し卒業は5月となる。この卒業のタイミングが、日本などアジアで英語教師として働こうと考える多くの学生にとっては重要で、卒業から就職まで長期の空白期間が発生しないように作戦を立てたり、空白期間に別の機関でインターンを行ったりする学生もいるようだ。日本の多くの企業では4月採用を標準としている。5月に卒業して翌年の4月まで待てる環境ならばよいが、9月採用の希望職種に出会えるとは限らない。そのため、12月卒業の彼が11月のボスキャリで1月採用の会社に決まったことは、まさにトントン拍子というほかない。「ご縁」そのものだ。

そのアメリカ人学生に「ご縁」を説明するのに苦労した。セレンディピティみたいなものと説明したが、それとは少し違う気がする。私の印象は、セレンディピティはアクティブに自分から幸運や好ましい偶然をつかみ取っていく気づきの力で、ご縁とは人間の力を超越した、抗えない何か大きな流れのことで、今回の彼の就職活動は「ご縁」のカテゴリーに仕分けしたいと思ったのだ。なぜなら、一度も暮らしたことのない日本での生活を決めた彼に、なにかあたたかいお守りのような響きのする、「ご縁」という言葉で祝福したいと思ったからだ。

今週もおしゃべり交流会の日本語チャットであった。まさかこのチャット参加者から日本勤務の学生が誕生するとは思わなかった。独学で日本語を勉強し、話し方だけでなく態度も丁寧で礼儀正しく、人柄も素晴らしい彼を採用決定した日本企業は大正解だと思う。専門領域のエンジニアリングだけでなく、うどんも茹でるし寿司も握れる彼と夏に東京でお寿司を一緒に食べることを約束し、きっとその頃には日本語を流暢に操る日本大好き青年になっているのだろうと思い、再会が楽しみだ。