TESOL@ペンシルベニア大学

University of Pennsylvania 教育学大学院へのフルブライト奨学金留学

フルブライトエンリッチメントセミナー その1 概要

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フルブライト奨学生に採用されると、大学院の授業料や月々の生活費等の給付といった財政的援助のほか、さまざまなネットワークの機会も与えられる。私の場合は、ペンシルベニア大学へ入学する直前の8月に、マイアミで5日間のゲートウェイオリエンテーションへの参加、そして4月にはワシントンDCで5日間のエンリッチメントセミナーへ参加する機会をいただいた。

もう2か月以上前の話になってしまったが、エンリッチメントセミナーの様子を記しておこうと思う。つい先日、今年度のフルブライト奨学生のアメリカ大使公邸への訪問の写真をfacebookで見かけ、あれから1年か、と懐かしくなり、フルブライトのことについて書いてみたくなったのだ。

 

私も1年前の今頃、キャロライン・ケネディ大使(当時)と大使公邸でお会いした際に、私の研究内容について耳を傾けて励ましてくださったことがとても嬉しかった。その後他のフルブライト奨学生たちと食事しに行き、平日にも関わらず遅くまで語り合った際、奨学生たちの優秀さ、寛容さ、傾聴力、視野の広さ、その道のプロとしての誇り、明るく前向きな態度と言葉に心底驚嘆した。多分私が最年長で、私は自分の研究というよりも、これからの若者の知的思考力、協働力、創造力を高めるために英語教育という側面からどのようにアプローチしたらよいかをいつも考えていた。そんな私の目の前にズラリと並ぶ、キラキラと眩しい若者のロールモデルたち。自分の教える生徒たちの10年後の姿と重ね合わせた。

 

8月のゲートウェイオリエンテーションでは、40か国から70人、4月のエンリッチメントセミナーでは50か国から90人の参加者と共に時を過ごした。全世界から集まるフルブライターは、やはりプラスのエネルギーに満ちあふれていた。

さらに言うと、「国の誇りと責任を持って、自分の国をどうにかするために学びに来た」という使命感をもって来ている人が多いように感じた。日本のフルブライト大学院留学プログラムでは20人ほどの奨学生がいるが、国によっては毎年1〜2名のところもあるようだ。

ちなみに先日の報道によると、アメリカのフルブライト奨学金への予算を47%削減する案が発表されたそうだ。トランプ大統領になってからの移民政策や留学生へのビザ発行など心配してきたが、やはりというか、ついにフルブライト予算もかという気持ちだ。

 

www.washingtonpost.com

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ゲートウェイオリエンテーションでは、参加者の専攻はバラバラで、職業も大学院生もいれば、休職または退職してきた、各国の弁護士や建築士や行政官や医師やエンジニアなどバラバラであった。唯一の共通点は、70人ほぼ全員が東海岸の大学院に進学ということだった。これは、オリエンテーションがマイアミで行われたことと関係しているものと思われる。アメリカ各地で異なる日程及び日数でオリエンテーションが行われていた。中には数週間にわたるオリエンテーションだった人もいるようだ。費用はフルブライトが全額出してくれる。

これに対しエンリッチメントセミナーでは、テーマを選択できる。政治経済、テクノロジー、教育など、自分の研究や関心に沿って選択する。私は迷わず "Educational Justice"「教育における正義」を選択し、セミナー会場はワシントンDCのジョージワシントン大学と指定された。

その結果、当然のことだが、参加者は全員教育分野のフルブライターだ。私のように元英語教員で休職あるいは退職して大学院生になった人もいれば、言語学や言語教育学の大学院生、公共政策学の大学院生、教育行政官、教育普及のための機関を自ら立ち上げた人もいた。

例えば私が5日間共に過ごしたルームメイトはスーダン人で、彼女はスーダンの女性の権利や女子教育に関する機関で働いている。初日から一緒にクラブに踊りに行った女性はナミビア人で、彼女はナミビアに国立大学が1つしかなく教育の機会が乏しいことから、高校卒業後の、教育とテクノロジー職業訓練の両方を提供する機関を立ち上げようとしている。多彩な顔ぶれの中、教育の不平等や女子教育、言語習得、教育行政等について5日間たっぷり語り合った。

 

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アメリカで英語を教える(番外編2)sarcasmの使い方

春学期の大学院授業の課題の一つとして、再度PEDAL@GSEで英語を教える機会を得た。

PEDAL@GSE - PEDAL@GSE Classes

今回のテーマは「ユーモア」ということで、アメリカのユーモアの理解と、それを実際に使ってみるというのが大きな流れだ。

ユーモアといってもいろいろだ。いわゆるアメリカンジョーク、ダジャレや言葉遊びの pun、皮肉とよく訳される sarcasm など、幅が広い。人種やエスニシティ、ジェンダー、宗教等に関わるセンシティブな表現も多い。大学院の授業では、それらと言語教育や異文化理解、多文化共生とどう繋げていくのかを学びながら、最後のグループプロジェクトとして30分間の授業を行った。

 

大学院の最初の授業で、「最後のグループプロジェクトはユーモアを教える授業をやってもらいます」と教授に言われ、まず最初に頭に浮かんだ疑問が「ユーモアって教えられるの…?」だった。そしてその後に、「どうやって、何を教えるの…??」と思った。アメリカのユーモアを教えるというのは全く新しい発想だし、未知のフィールドだった。

 

今回の対象クラスは中級クラス。3人グループで30分間教えるが、私たちの前に教えるもう一つの3人グループと相談し、2つのグループで60分間の授業にした。前半は「sarcasm を知る」、後半の私たちは「sarcasm を使う」をテーマとした。

 

ユーモアを含む表現は日常生活でも多用するし、映画やテレビドラマのセリフでしょっちゅう出てくるが、特に sarcasm は欧米出身でない人にはわかりづらいものだろうと思う。そんなわけで、今回の中級クラスの授業のテーマを sarcasm と設定した。

最上級クラスでは、雑誌 The New Yorker の1コママンガのキャプションを作る、というユーモアの授業にしたそうで、レベルの高さに驚いた。

 

前半の30分間の「sarcasmを知る」は次の流れで行われた。

 1.フレンズの映像を用い、sarcasm を使う際にどのような表現とシグナルが用いられるかをディスカッションする。その映像内では、実際の状況と反対の表現、大げさなイントネーション、視線、ウインクなどが用いられ、生徒同士で気づいたことを話し合ってもらった。

2.sarcasm をこれまでに使ったことがあるか、または使われているのを聞いたことがあるかをペアでディスカッションする。終了後全体で共有する。言葉での sarcasm のほか、「好ましくない状況が起きた時のゆっくりした拍手」など、言葉以外の sarcasm も共有された。

3.ファシリテーターが sarcasm の説明をし、モデルを示す。大げさなイントネーション、逆に平坦なイントネーション、スピードの変化、目の動きをモデリングする。

4.シンプソンズの映像を用い、sarcasm がどのように用いられているか、どのような表現を使っていたか、表情やジェスチャー等、気づいたことをディスカッションする。

5.映画やTVドラマから短い映像を3本見せ、スクリプトをヒントとして読みながら、その場面でどのような sarcasm が用いられていたかディスカッションする。

 

前半グループから交代し、私たちの30分間の「sarcasmを使う」は以下の流れで行った。

1.パワーポイントを用い、6種類の異なる状況を示し、どの状況で sarcasm を使うのが適切かディスカッションする。6種類の状況は、葬儀、上司との面談、友人同士での会合等。sarcasm が許される場所、人間関係、状況について説明する。

2.生徒の母国で sarcasm を使うのはよくあることかどうかペアでディスカッションし、その後全体で共有する。常に使うと答えたヨーロッパ出身の生徒もいれば、冗談にしても皮肉めいた表現をしたくない、と答えたアジア出身の生徒もいた。

3.パワーポイントを用いながら、sarcasm を使う際の3つのよくある表情を示す。smirk and side eyes(ニヤリとした皮肉めいた笑顔で、片側の口角だけ上げ、横目で見る)、eye rolls(眼球を上に動かし白目をむく感じ)、raising eyebrows(眉を上げる)を紹介し、練習する。

4.前半30分間の授業で示した、声の変化を練習する。特にイントネーションとスピードに留意しながら、"Yeah, great!" "Fantastic!" などを、大げさに言ったり反対に平坦に言ったりする練習をする。さらに、3で示した表情をつけながら練習する。

5.sarcasm を sarcasm らしくする2つの方法を示す。ここでは、「OhやWow 等のinterjectionの使用」「reallyやabsolutelyなどの強い副詞や形容詞」を紹介し、"Oh, that's REALLY nice." 等を表情と声の変化を加え練習する。

6.sarcasm を使うのにふさわしい、よくある状況を2つ説明する。「誰かが何かまずいことをした時」「誰かが何か当たり前のことを言った時」を紹介し、状況をパワーポイントで示した後、どのような sarcastic expression を言うかペアで話す。

7.教室の5か所に5つの大きな紙をあらかじめ張っておく。それぞれの紙には、異なる状況が書かれている。生徒を5つのグループに分け、各グループはそれぞれ紙の前に移動する。生徒は紙に書かれている状況のシナリオを読み、その状況に対応する sarcasm を含んだセリフをグループで話し合い、紙に書き込む。終了後、各グループは時計回りに移動し、別のシナリオに関して同様のことを行う。5回繰り返し、すべての生徒がすべてのシナリオに対し sarcasm を含むセリフを書き込む。終了後、各グループに発表してもらう。

 

今回は大学院の授業の一環として飛び込みで行った授業であったため、相手は初対面の生徒だ。初めて出会う生徒相手にeye rollsを実演して白目をむき、ユーモアを教えるのは本当に気まずかった。 生徒にしてみても、「誰この人?」と思う相手にいきなりユーモアなど教えられて困っただろう。

生徒の出身地域はさまざまで、文化も考え方もその人によって異なり、そもそも sarcasm を使いたいかどうかも人によって異なる。sarcasm を使うことによって深刻な雰囲気を緩和したり、友情や仲間意識を高めたりする効果があるため、ユーモアを会話に組み込むことによる利点をもっと強調したらよかったと思う。

 

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NYUインフォメーションツアー

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ニューヨーク大学のインフォメーションツアーに参加してきた。

 

http://www.nyu.edu/admissions/undergraduate-admissions/visit-nyu.html

 

NY滞在4日間、コロンビア大学に行ったり国連本部に行ったり、まるで出張かと思うような夏休みである。でも好きなのだから仕方ない。

ブロードウェイミュージカルも2回目の鑑賞。NYUやコロンビアの学生だと、こういったミュージカルや美術館等の割引チケットも手に入るらしい。NYで学生生活を送るのは刺激的だろうなあと思う。

フィラデルフィアも負けてはいない。フィラデルフィア管弦楽団の学生チケットは年間25ドルさえ払えば無料で通い放題だ。通常チケットの残りが充てられるので座席は選べないが、バルコニー席からオーケストラ席まで、当日のお楽しみだ。フィラデルフィア美術館も、学生チケットは年間20ドル。10数年ぶりの「学生証」を手に、芸術にふれる喜びを日々感じているが、若い頃は今ほど恩恵を受けようと思っていなかった。

 

さて、ニューヨーク大学の説明会だが、参加者は100名弱といったところ。今回はインフォメーションセッションと、学生によるキャンパスツアーのセットである。参加者は東海岸の高校生親子がほとんどだが、中にはカリフォルニアから来た高校生親子もいる。

 

以下にセッションの様子を書くが、あくまで私個人の感想である。正確な情報は公式サイトや直接NYUとコンタクトをとって確認していただければ幸いだ。

 

プリンストン、ペンシルベニア、コロンビア、と回って今回4度目のインフォメーションセッションであるが、初めての「大学紹介ビデオ」で開始した。学生の手によって制作されたビデオはとてもオシャレで刺激的。

ビデオからも、その後の大学説明からも、NYUは「学問とニューヨークシティでの経験」の2つの軸を融合させることを重視していることがわかる。

1831年の創立の意図は、人種やエスニシティや社会的バックグラウンド等に関わらずすべての人に門戸を開いた、revolutional(革命的な)urban educational institute(都市にある教育機関)を目指したとのことだ。

なるほどマンハッタンの良い場所にあり、230 以上の学問分野、スクールとカレッジの数も 10 で、世界各地にネットワークをもつ巨大研究機関である。教授対学生の比率は 1:10 だそうだが、63%の授業が20人以下の少人数制をとっている。ダブルメジャーの自由度も高い。

自分で設定した専攻の学問を続ける自由度も高い。例として、4年間漫画の研究をし続け、インターンシップも漫画関係でやり、結局その人のためにインターンシップ先が特別にポジションを作ってくれて就職した例や、evil(悪)の研究を4年間続け、映画や文学や物理学等、複数の分野に亘って悪に関することを学んだ結果、ロースクールに進学した例が挙げられた。

NYUの重視する点は、「学問と、さまざまなバックグラウンドをもつ人々とのインタラクションの融合」である。それを達成するために、インターンシップも盛んだ。大学の提供するインターンシップ先は22,000箇所。Newsweek, New York Times, Broadway, 国連本部やウォール街など、ニューヨークならではのインターンシップ先が挙がる。

インターンシップや学生同士やコミュニティとのインタラクションを通じ、自分の幅を広げることを重視する大学、といった様子である。

 

その他、学生寮や奨学金や出願プロセスについて説明があったが、公式サイトと重複するので省略する。

 

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その後、5グループに分かれ、student ambassador と呼ばれる学生に引率されキャンパスツアー。歩きながらさまざまな質問に答えてくれた。アメリカで最も高額な大学の一つと言われるNYUだが、やはり留学生向けの奨学金はほぼないらしい。インターンシップは、専攻によっては授業の一環であるため通常の学期期間中に行う人もいれば、夏休み中にやる人もいるとのことだ。その学生は、通常期間中に週2〜3日ほどインターンとして働いているそうだ。

 

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個人的な感想は、ニューヨークという土地を最大限活用すべき大学、という感じだ。インターンやボランティアで、学んだことをコミュニティで実践したり実験したりするのに最適だ。アメリカの大学によくある「キャンパス自体が大きな公園」という雰囲気ではなくNYCのビルからビルへ歩く感じなので、隣にあるワシントンスクェアパークが憩いの場所であろう。

 

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