TESOL@ペンシルベニア大学

University of Pennsylvania 教育学大学院へのフルブライト奨学金留学

移民教育タウンミーティングと、サンクチュアリーシティ(聖域都市)に対する大統領令について

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非常に政治的な話題であるため書くつもりはなかったのだが、トランプ大統領による、メキシコ国境への壁の建設とサンクチュアリーシティへの資金削減の大統領令への署名の報道があったため、アメリカの移民政策と移民教育の現状を伝えるため書くことにした。個人的な感想を挟まず事実だけ、フィラデルフィアで1月24日の夜に行われたタウンミーティングの内容を記録しておこうと思う。

タウンミーティングの概要

話し合われる内容と参加者

日本でも多くの自治体でタウンミーティングが行われている。下はその定義だ。

タウンミーティングとは、主に地域住民の生活に関わる事項を話題とする集会。一般には行政当局または政治家が実施する対話型集会を指す。英語圏では同名の地方自治制度(→タウンミーティング)との混同を避けるためにタウンホールミーテイング(英:town hall meeting)と呼ぶのが一般的である。

(出典:Wikipedia)

今回参加したミーティングの主催はフィラデルフィア市議会議員、フィラデルフィア市教育局などで、写真にもある通り、"Community Town Hall: Supporting Philly Immigrant Students"(コミュニティタウンホール:フィラデルフィアの移民の生徒の支援のために)と題され、フィラデルフィアコミュニティカレッジ(CCP)の講堂で行われた。一部記事によると200人以上集まったとあるが、講堂には立ち見の人も大勢いた。

www.philly.com

フィラデルフィアの公立学校の生徒の12%が英語学習者であるという統計がある。つまり生徒のうち8人に1人は英語を母語としない。バイリンガル教育のパイオニアとして長い歴史のあるフィラデルフィアであるが、政策転換や教員の確保などさまざまな要因が絡み、現在では勢いをなくしている。

thenotebook.org

 

タウンミーティングは、あらかじめ登録していた発言者が、自分の体験や思いを代わる代わる語っていくスタイルで進められた。 

 

体験談の内容

メキシコからの移民の母親

発言はすべてスペイン語で、1文ずつ通訳が介された。

3人の子どもが公立学校に通っている。学校での子どもの安全を強化してほしい。子どもが学校で差別的な扱いをされ、言葉によるいじめと身体的暴力を受けている。「この国の人間ではないのだから帰れ」と言われる。特に昼休みと放課後にターゲットにされる。授業時間以外にも目を配ってほしい。保護者として、ボランティアで昼休みや放課後の見回りや活動に参加したくとも、社会保障番号 (Social Security Number, SSN) を持たないためバックグラウンドチェックに引っかかり、参加することができない。SSNがなくてもボランティアできれば、もっと学校に関わることができるのに、残念だ。

 

2012年に移民として入国した男子学生

アメリカに来たばかりの頃、全く英語ができなかった。ESOL (English for Speakers of Other Languages, 英語を母語としない人のための英語) の授業に入ったが1種類のクラスしかなく、先生や周りが何を言っているのか理解できなかった。世界は、みんなのいる世界と自分しかいない世界の2つに分かれているようだった。複数のレベルのクラスや個別サポートがあればよかったと思う。英語の先生が不足している。バイリンガルのスタッフも不足している。入国したばかりの移民の生徒は、どこに何があってどう行動したらよいのか何もわからない。周囲の同級生がいろいろ教えてくれたが、それは周囲の同級生の責任でやることではないと思う。移民向けのリソースがもっとあれば良いと思う。

 

ベトナムからの移民の高校1年生の女子学生

発言はすべてベトナム語で、1文ずつ別の女子学生が通訳した。

個人的な体験を語るのではなく、私たちは 移民教育とESOL (English for Speakers of Other Languages, 英語を母語としない人のための英語)の授業に関し、オンライン調査を行ったので、この場でその調査結果を示し、移民の声を届けたい。調査で分かったことは、学校と保護者のコミュニケーションが困難だと多くの人が感じているということだ。バイリンガルのスタッフは週に数日しかいない。バイリンガルのメンターやカウンセラーの拡充が必要だ。移民の学生のほとんどがファーストジェネレーション(保護者が大卒でない家庭から子どもが大学に進学すること、第一世代)であるため、バイリンガルスタッフは必須だ。さらに、放課後のプログラムも不十分だという結果が出た。教育のための予算を拡充すべきだ。

(注:アメリカの高校では、大学進学の際に担任ではなく(そもそも担任という概念がない)ガイダンスカウンセラーと相談をする。この職は授業を行わない専門職で、生徒とカウンセリングを行いながら推薦状を書いたり成績を証明したり、出願の際に提出の求められる学校全体のプロフィール書類を作成したりする。私自身も日本の高校で、教え子がアメリカの大学に出願する際にガイダンスカウンセラーとしての書類を整えたことがあるが、アメリカはこんなに面倒なことをするのかと思うくらいに煩雑な書類の山で、何度も生徒と話し合いながら行った。アメリカでは学校の在籍生徒数に応じてカウンセラーの配置数を決定していることが多いようで、フィラデルフィアでは600人未満の学校にはカウンセラーを置かない年もあったようだ。下の記事に詳細あり。)

philadelphianeighborhoods.com

 

学校関係者

私の学校には多くの移民や難民の生徒がいる。多くが戦争を目撃し心に傷を負っている。戦争を経験し耳のない生徒もいる。そんな生徒が言葉や身体的暴力にあっている。10歳のシリア人の男子生徒が廊下で6人の女子生徒に囲まれて蹴られていたこともある。英語を話すかどうかは問題ではない。移民の生徒の中には英語が母語の者もいる。問題は話し手ではなく、聞き手にある。

 

メキシコからの移民の両親をもつ15歳女子学生

両親の出身はメキシコで、英語が話せない。学校とのコミュニケーションのためには私が通訳をしてきた。自分の両親だけではなく、他の家の両親のためにも通訳してきた。まるで自分が犯罪者であるような扱いを受けている。移民の子どもの私にも教育を受ける権利がある。

 

ハイチからの移民の男性

移民のための英語の授業を受けていた頃は、母語であるフランス語のわかるスタッフがおらずあらゆることに時間がかかった。私は公立学校を卒業し、去年MBAを取った。フィラデルフィアの人口の10分の1が移民である今、子ども達に投資しよう。彼らが必要としている支援をしよう。

 

難民であるムスリムの女性

私の母はジャーナリストで、真実を書いたために国にいられなくなりアメリカに来た。教育支援やメディケアには感謝している。多くの移民や難民は経済的問題を抱えている。一番の敵は不公平さである。大学の学費の高さに困っている。学費は無償にならないだろうか。

 

市当局関係者

私の両親も移民で、高校を卒業していない。州と市からの予算を BCA (Bilingual Counselor Assistant) と、保護者への英語の授業に充てるべきだ。全員にコミュニケーションの機会を増やしたい。

(注:フィラデルフィアではBilingual Counselor Assistant (BCA) という職種を設け、生徒や保護者とのコミュニケーション、通訳、事務などを行っている。)

Interpretation Services - The School District of Philadelphia

 

その他にも大勢の人が発言し、1時間半の予定だったタウンミーティングは、会場が閉鎖される直前まで2時間続いた。

 

移民政策と大統領令について

このタウンミーティングには同じ大学院に通うアメリカ人の友人と共に行ったのだが、ずっと疑問に思っていたことを彼女に聞いてみた。「移民ではなくアメリカ国民にお金を使え、と思わないのか」と。すると彼女は、Providing hope to everyone, とだけ答えた。

news.upenn.edu

彼女は上の記事の通り難民に英語を教えているのだが、公立学校のESOLプログラムに通うはずの生徒が彼女の教える民間機関に送り込まれてくることもあるそうだ。そして、リベリアなど、出身国の公用語が英語であるため英語力に何の問題のない生徒でも、人種を理由に送られてくるという。

 

そして今日(アメリカで1月25日)、トランプ大統領の出した大統領令を受け、サンクチュアリーシティ(聖域都市)であるフィラデルフィアの市長が、政府からの補助金を削減されてもサンクチュアリーシティであり続けると述べた。ちなみにサンクチュアリーシティとは、undocumented (正式書類のない)の移民、つまり不法滞在の外国人に対し、警察(自治体管轄)が介入しないという取り決めをした市のことである。

 

www.philly.com

 

ペンシルベニア大学も、昨年の11月末に学長がサンクチュアリーキャンパス宣言を出したばかりだ。大まかに要約すると、undocumented の移民であっても大学は保護しますよ、という内容だ。

 

賛否両論あるのは当然で、各ニュース記事でコメント欄がすごいことになっている。

壁の建設やサンクチュアリーシティへの締め付けといった移民政策だけではなく、ビザ発給数にも今後影響が出てくるかもしれない。私はJ1ビザという交流訪問者ビザでアメリカにいるのだが、トランプ大統領はJ1ビザの廃止を以前唱えていた。学生ビザへの影響はどうだろうか。新大統領が誕生してから揺れに揺れるアメリカだ。

 

 

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留学トラブル2 バスルームシェアとキッチンシェア

アメリカの大学寮は巨大だ。何棟もあるし、大学院生専用寮もある。

もちろんキャンパス外で部屋を借りることもできるし、ペンシルベニア大学の場合その方が割安だ。渡米前にオンラインで部屋を探し、大家さんとスカイプで面談し説明を受け、日本にいながら契約をする人も多い。facebookで同じ国籍の人同士でルームメイトやシェアメイトを募集していることもよくある。

大手サイトも大量にあり、オンラインで部屋の様子を確認し、家の周囲の通りの様子も見ることができるし、ルームメイトと面談することもできる。便利な世の中になったものだ。近所の犯罪発生状況もオンラインで調べることができる。下のサイトがその一例だ。

http://www.spotcrime.info

サブレットの部屋を探せば格安で住むことも可能だ。ただし、サブレットだと大元の家主や業者と契約を交わさず個人間でのやり取りで部屋を決定することが多いため、問題が複雑になりトラブルになっているケースも耳にする。

 

ペンシルベニア大学での寮生活はその点は楽だ。割高だが、契約は明瞭、光熱水費込み、WiFi付き、洗濯機乾燥機付きでしかも無料、修理依頼は一括大学へ。授業で私の通うメインの建物へは徒歩2分。

しかしもちろんトラブルもある。今日はバスルームとキッチンのシェアについて書く。

 

関連記事

upenntesolfulbright.hatenablog.com

 

ルームメイトとのバスルームシェア

掃除問題から異文化間交渉

私の暮らす寮には3種類の部屋があるのだが、私の部屋は独立しているワンルームでキッチン無し、バスルームだけを1人の隣人とシェアする最安の部屋で月900ドルである。

私は自分のテリトリーが乱雑でも気にならないのだが、公共の場が汚れていることがどうしてもストレスで、お掃除おばさんと化してせっせとバスルームを磨いている。

しかしバスルームをシェアしているルームメイトはシャワー使用後、洗面台のあたりまでフロアを水浸しにする。うっかり足を踏み入れてしまうと自分の部屋まで濡れてしまうほどだ。しかも硬水だからか、乾くと水の跡が残ってしまうから厄介だ。さらに、ルームメイトのロングヘアがあちこちに大量に散らばっている。

2人で共用なのでお互い様だし掃除くらい、と思い後始末は私がしていたが、毎度となるとモヤモヤもたまっていた。いつものように濡れたフロアを掃除しているとルームメイトが気づき、バスルームのもう一方のドア越しに話しかけてきた。

 

「いつもあなたが掃除していて悪いわ。

 私も掃除した方がいい?

 掃除用品買ってきて置いておこうか?

 

そうかなるほど。私、バスルーム掃除好きな変な日本人だと思われていたのか。

ルームメイトと話し合わず、そのくせ不満を抱えて一人でモヤモヤしている察してちゃんだったわけだ。言わなきゃわからないよね、そうだった、そのために口が付いてるんだ、と思った。あまりの考え方の違いに笑ってしまった。

その後話し合いをし、大人同士お互いに気持ち良く過ごせるように最大限努力する、というなんとも曖昧な約束をした。その結果、お互い競い合うように掃除をし、スーパークリーンバスルームを維持している。

 

ルームメイト彼氏問題

ルームメイトの、州外に住む彼氏が定期的に遊びに来る。引越しの際にその彼氏と話もしたし、微笑ましく思っているのだが、いざ一緒にバスルームをシェアするとなると地味に消耗することがある。

ある時は洗面台に置いている私の歯磨き粉が行方不明になった。ルームメイトに尋ねたところ、なぜかルームメイトの彼氏の鞄から出現した。使っても全然構わないが元の場所に戻してほしい。

2人でシェアしているバスルーム、3人でシェアするとなると朝は取り合いである。というか向こうの2人に取られっぱなしである。

ルームメイトの彼氏のトイレの使い方に絶句したこともあった。

シャワールームの使い方はルームメイト以上にひどく、どうやったらこんなになるのだろうと心底疑問に思うほど、バスルーム全体のフロアが水浸しになる。

バスルームにいながら向こうの部屋と大声で話をするので声が筒抜けで、翌日締切のペーパーを書いていた私はたまりかねてバスルームのドアを叩き、Heeeeey! Can you guys talk in your room!? Thanks! と怒鳴ったこともある。

 

寮のフロアでのキッチンシェア

私の部屋にはキッチンがないため、寮に住む希望者で共同キッチンを借りており、学期ごとに追加で100ドル支払っている。寮は22階建てで、上下3フロアに住む8人で共同使用だ。キッチンと言っても、キッチン付きの普通の空き部屋である。

ちなみに、キッチンとリビングルームとバスルームを1人のルームメイトとシェアするダブルルームは月額1人あたり1000ドルだ。専用のキッチン、リビングルーム、バスルーム付きの1人部屋だと月に1500ドルかかる。今回の共同キッチンは、この1500ドルの空き部屋を開放してもらっている。

使用前からキッチンがカオス

共同キッチン使用前に8人で顔合わせをし、清掃や消耗品や冷蔵庫の使い方などを話し合ったのだが、最初の数週間はさまざまあった。

 

部屋の鍵が開いていて、見たことのない人がソファでくつろいでテレビを見ている。

知らない人が大勢でパーティーしている。

奥の部屋のドアをきっちり閉めて何事か行っている。

トイレに落とし物がある。

誰のか分からない炊飯器がずっと保温中である。

いつのか分からない食品が冷蔵庫に放置されている。

3つのコンロのうち2つが壊れている。

 

顔合わせをし、みんなでキッチンに行ったその時から所属不明の食品群とトイレに落とし物があったため、寮の全体管理部署に連絡して処理を依頼した。

しかし管理部署は冷蔵庫内の食品は関知しないとのことだったので、有志で集まり、冷蔵庫内断捨離を行った。

後から聞いた話によると、昨年度にキッチンを使用していた人たちの鍵を回収せず、出回っていたらしい。

 

使用者もカオス

8人でキッチンをシェアしているとやはりいろいろある。

 

使用した調理器具をシンクに数日間放置する。

コンロを汚したまま放置し、煙を出す。

アルミホイルを電子レンジでチンして火花を出す。

謎の乾麺が部屋中に散らばっている。

冷凍庫に詰め込みすぎでドアが開いている。

生肉がラップもせずむき出しで冷凍庫に突っ込まれている。

冷蔵庫内には炊飯器の釜がむき出しで突っ込まれていて米がカピカピになっている。

名前を書いて入れておいた食品が冷蔵庫からなくなる。

 

寮生活あるあるだ。

私は自分の部屋にミニ冷蔵庫を置き、共有冷蔵庫に入れているものは白菜やキャベツなどの大きな野菜だけにして自衛している。

 

(追記)
これを書いた4日後に、共有冷蔵庫に入れておいた白菜が1玉まるまる消えた。日本で手に入れられるような立派な白菜ではなく、可愛らしい小玉白菜ではあるが、きちんと白菜で、重さによるが1玉3ドル以上する。アンチョビと白菜のパスタを作ろうとウキウキしながらキッチンに行って白菜が消えている悲しさは言葉では表せない。
ちなみに白菜は英語で Napa Cabbage という。ナッパである。

 

おまけ 昔経験したカナダでの男女共同バスルーム

大学時代に留学していたカナダのヨーク大学の寮は、フロアでバスルームとキッチンが共同だった。フロアの中央のバスルームにトイレが4〜5つ、シャワールームが3つ、バスタブが1つあり、同じフロアに住む20人ほどで共同使用だった。

男女一緒のフロアだったため、当然バスルームも男女一緒である。

海外にはよくあることだが、トイレのドアは日本と異なり膝下が見える。シャワールームのドアも同様で、上も下もオープンだった。

そんな状況での男女一緒のバスルームだったため、さまざまあった。

 

誰がトイレに入っているのか足元で判別できるので、いたずらで上からトイレットペーパーを投げ込む学生がいる。

トイレ後の臭い消しのためにマッチを擦るカナダ人が多く、個室でボヤ騒ぎを起こす。

シャワールームのドアの高さよりも背の高いカナダ人が多くいて、シャワーを浴びていると上から目が合う。そしてハーイと声をかけられる。

シャワーを浴びた後、男子学生はパンツ一丁かバスタオル一丁でそこら辺を歩き回る。

シャワーを浴びた後、女子学生の中にはバスタオル一枚でそこら辺を歩き回る者もいる。

コモンルームという、各フロアにある、ソファとテレビのある共同スペースにパンツ一枚やバスタオル一枚の姿の男女学生が多数集い、ナチュラルにテレビを観ている。

 

海外の寮で生活すると自分の常識からは考えられないことに遭遇する。他にも(ここには書けないような)さまざまなことがあり、私はカナダの大学寮は耐え切れず半年で出てハウスシェアをした。まあ、そこでもさまざまあったわけだが、寮よりは快適だった。犬猫と共同生活で癒されたし。

今はもう大人になり、トラブルがあっても生徒に話せるネタが増えたと喜んでいるくらいだが、博士課程に在籍する人や、人生に関わる研究生活を送る人や、お子さん連れで留学する人は、どうか住まい選びは慎重にしてほしいと思う。安全と清潔と心の平穏のためにはある程度の住まいレベルが必要で、それらはお金で買うことができる。

 

教訓2 快適な留学生活にはルームメイトとの条件の話し合いが必須。安全と清潔はお金で買える。

 

 

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留学トラブル1 銀行のカードが届かない

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リスの二段腹を見たことがあるだろうか。Pennのリスは冬眠しないタイプのリスで、雪の積もった日にも活動していた。頭の上に何かポロポロ落ちてくると思ったら、リスが木の上で一生懸命木の実を食べている。しばらく観察していると、秋の間に土の中に埋めておいた木の実を掘り起こし始めた。ベンチの下で雪の積もらない場所に隠しているようだ。賢いやつは生き延びる。二段腹は賢さの証なのか。

 

センター試験が終わった。去年の今頃は高校3年担任で、センター試験会場前でメッセージ入りキットカットをばらまいていた。浪人しているあの子らはどうしているだろうか。去年はセンターリサーチの日に大雪で電車が止まり、数時間歩いて登校し震える生徒を慰めたり、登校できない生徒に電話でセンター試験の得点を尋ねたりして大騒ぎだった。つい昨日のことのように思い出す。毎年どんどん時の流れが速くなり恐ろしい。今年もセンター試験当日は各地で雪だったようで、受験生や保護者や学校関係者はさぞ辛い思いをしただろうと思う。いよいよ受験シーズン開始だ。どうかすべての受験生がベストを尽くせますように。

 

渡米して5か月になる。夏にアメリカに来たばかりの時にはトラブル続きで同級生に同情されるほどだった。銀行、寮、TAの仕事と社会保障番号申請、授業料支払いなどあらゆる場面で問い合わせと個別交渉と苦情申し立てを何度したか分からない。

先週、春学期の授業料支払いに関し再度トラブルがあり、久しぶりに個別交渉に行った。大学側の対応にプリプリ怒りながら、日本ならこんなことありえないのに、と日本のシステマティックなサービスを懐かしんだ。

慣れない土地での留学生活、日本とは異なりサービスは過剰ではないし、自分から動かないと何も解決しない。ここで留学生活でのトラブルをまとめてみることにした。

 

トラブル1 銀行のキャッシュカードが届かない

銀行口座を開設し、カードを手に入れないことにはすべては始まらない。授業料や寮費の支払いはすべてオンラインバンキング、カード番号で行われるし、フルブライトからの月々の生活費の振込も、初回だけは小切手が渡されたが2回目からは銀行振込だ。大学院の寮に到着し、翌日には早速銀行へ向かった。

バンクオブアメリカ、TDバンク、PNC銀行など近所に銀行もATMも多くある。渡米前にどの銀行で口座を開設しようかと比較検討してきたが、私はPNC銀行にした。

理由は2つ。ペンシルベニア大学ではPenn cardという、学生証兼、大学のあらゆる建物へのアクセスカード兼、コピーやプリントアウト用チャージカードがあるのだが、PNC銀行はそのPenn cardと連携し、銀行キャッシュカードやデビットカードとしても使用できるのだ。つまり、学生証をATMに突っ込むとお金が出てくるし、コンビニやレストランでの支払いもできるということだ。また、Penn cardを持参すれば学生口座として開設されるため、月額口座維持費やATM使用手数料は発生しない。そのためPNC銀行にした。Penn cardとの連動は、口座開設が済んだ後にPenn cardを銀行の機械に登録するようだ。

金曜日の午後に大学院寮に到着し、Penn cardの発行を済ませ、学生としての身分を証明するものを得た後、土曜日に銀行に向かった。アメリカの銀行は土曜日でも午前中であれば一部業務に限り営業しているところが多く、中には定休日を平日にして日曜営業のところもある。

土曜日に口座開設の申請を行ったため、開設は月曜日扱いになる。カードが手元に届くまで5日かかるとのことなので、10日分ほどの現金を手元に残し、それ以外の現金は口座に入れた。寮に住んでいるため受け取りに不安があり、支店での直接受け取りを希望したが断られた。カード発行を扱う部署が他の場所にあるため、郵送になるらしい。

 

1週間経ってもカードは届かない。月曜開設だからさらに翌週に持ち越しか、と気楽に考える。

10日経ってもカードは届かない。手元に残る現金が頼りなくなってきた。大学院の教科書を買う頃にはカードが届いているものと思っていたのに、これでは教科書も買えない。住んでいる寮費も払えない。いざとなれば当面の買い物は日本のクレジットカードで行う心づもりをする。

2週間経ってもカードは届かない。2か月前に口座開設をした友人に聞いてみると、6週間待ってもカードが届かなかったため再発行してもらったとのこと。そして本来のカードは結局行方知れずとのこと。

そうか、アメリカで2か月暮らすと銀行のキャッシュカードが届かなくても気にならないくらいに鷹揚になるのね、私も早くそうなりたいものだわ、いや多分そうならないわ、と思いながら銀行に出かけた。事情を話し、手持ちの現金がないのでこの場で引き出すか早急にカードを発行してほしいと頼むと、なぜかその場でキャッシュカードが発行された。カード発行は郵送のみ、と言ってませんでしたっけ??

もし2週間前に発送されたはずのカードが後に手元に届いたら、そのカードは無効になるのかと尋ねると、そのカードも普通に使えるそうだ。カード番号が異なるので別カード扱いになるらしい。

なんだかよく分からないまま、とりあえず目的は達成したのでホッとして帰った。

 

3週間後、銀行のキャッシュカードがやっと届いた。アメリカでの生活の全財産が入っている口座のキャッシュカードが普通郵便で無造作に寮の郵便受けに突っ込まれているのである。

なぜなのか。

アメリカ人の友人曰く、「もし普通郵便で行方不明になり、誰かが手にしたとしても、暗証番号があるから心配無用」とのこと。しかし、クレジットカードと同様で、カード番号さえあればオンラインで買い物もできちゃうし、スーパーやコンビニによっては暗証番号無しで買い物できるところもある。

細かいことを気にしていてはアメリカでは暮らせないようだ。

 

教訓1 銀行や郵便のサービスを信用せず、問題解決は強気の個別交渉が基本。

 

 

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